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こんにちは、ももやまです。
今回もグラフ理論における基本用語をまとめていきたいと思います。
前回の離散数学(グラフ理論)第8羽はこちら!
グラフの基礎1はこちらから!
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1.グラフの連結性・連結グラフ
まずは連結グラフと非連結グラフの2つについて説明していきます。
連結グラフ
連結グラフは、グラフの中のどのような2点を選んでもたどることができるようなグラフのことをいいます。
厳密にいうと、任意の2点の間に道が存在するようなグラフのことを表します。
例えば上のグラフの場合、
非連結グラフ
連結グラフではないようなグラフのこと、つまりある2点を選ぶとたどることができないような(ある2点間に道がないような)グラフのことを非連結グラフと呼びます。
例えば上のグラフの場合、
非連結グラフを連結成分からなるグループで分離
非連結グラフはいくつかの連結部分グラフのグループに分割することができます。この連結部分グラフのことを連結成分と呼びます。
先ほどの例でいうと、下のように3つの連結成分に分けることができますね。
関節点
あるグラフにある点の中で、削除すると連結部分グラフのグループが増える点のことを関節点(カット点)と呼びます。
上のグラフの場合、点
なので点
橋
関節点の辺バージョンも存在し、削除すると連結部分グラフのグループが増える辺のことを橋(橋辺)と呼びます。
上のグラフの場合、
なので、
グラフの連結性やどれくらい強く連結しているか(連結度)については、こちらで詳しく説明しているので、もし興味があればこちらの記事もご覧ください。
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2.完全グラフ
(1) 完全グラフとは
どの2点の間にも辺があるような単純グラフのことを完全グラフと呼びます。
(2) 完全グラフの辺の数
完全グラフの辺の数は簡単に計算をすることができます。
どの2点の間にも辺があるような単純グラフということは、自分以外の点
しかし、無向グラフは向きがないグラフなので、
なので
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3.2部グラフ
(1) 2部グラフとは
グラフ
グラフ
(言い換えると
グラフを見ると、
下のように
(2) 2部グラフの判定方法
与えられたグラフが2部グラフかどうか判定する方法は簡単です。
下の2つのグラフで試してみましょう。
2部グラフは、2つのグループ
つまりそれぞれの点を2つのグループ(0,1と分けるのをおすすめします)にわけて、すべての点が同じグループ同士の点と隣接しなければ2部グラフということができるのです!
左上のグラフの場合、隣り合ってるすべての点同士が異なるグループになっていますよね。なので2部グラフということができます。
しかし、右上の場合、緑色の部分の点をどちらのグループに分けたとしても同じグループ同士で隣接してしまう点が出てしまいますね。なので2部グラフということができません。
(3) 2部グラフと閉路の長さ
実は2部グラフであるための条件は前回紹介した閉路の長さと関係しているのです。
グラフ
言い換えると、グラフ
先ほどの2つのグラフをみてみましょう。
左側のグラフには閉路の長さが奇数である閉路がありませんね。なので2部グラフと言えます。
一方、右側のグラフには長さが3の閉路(三角部分)がありますね。なので2部グラフとは言えません。
(4) 2部グラフと彩色数
あるグラフの頂点を隣に同じ色が来ないように色分けするために必要な色の最低数のことを彩色数といいます。
実は2部グラフであれば、必ず2色で頂点を色分けすることができるのです!
(2部グラフの判定方法で0, 1を書く代わりに青・赤で塗り分けることを考えればOK)
グラフの彩色について詳しく知りたい人はこちらの記事をご覧ください!
(頂点の彩色・辺の彩色両方載せています!)
4.完全2部グラフ
(1) 完全2部グラフとは
2部グラフの中でも
下に完全2部グラフの例を3つ示しておきます。
(2) 完全2部グラフの辺の個数
完全2部グラフの辺の数も簡単に計算をすることができます。
完全2部グラフは、
よって、
5.同型グラフ
(1) 同型とは
グラフの見た目が違っていても、回転、変形などを駆使することでもとのグラフと同じ形になるようなグラフのことを同型グラフ(同形グラフ)と呼びます。
例えば、下の2つのグラフは180°回転させると同じグラフになりますよね。なので同型です*3。
しかし、この2つのグラフだとどうでしょうか。
見た目が全然違うので同型には見えませんね。しかし、
このように変形をさせると左側のグラフと一致させられますね。
なので同型です。
一応同型の厳密な定義もみてみましょう。
グラフ
さらに、同型であるグラフには下のような関係も成り立ちます。
同型であるグラフは必ず辺の数、点の数が等しい。
ただし、辺の数、点の数がともに等しくても同型であるとはかぎらない。
必要十分条件を用いて表すと、2つのグラフの辺の数、点の数が等しいことは同型であることの必要条件である(十分条件とはならない)。となります。
(2) 同型の判定法のコツ
見た目からあるグラフが同型かどうかわからないようなグラフについては同型かどうか判定するのに少しテクニックがいります。
例えば次の2つの図形が同型かどうかを調べてみましょう。
Step1:辺の数、点の数を確認
まず辺の数、点の数を確認します。2つのグラフでどちらか一方でも異なった場合は同型ではありません。
今回の場合、左のグラフ、右のグラフともに点が7個、辺が9個なので同型の可能性が残っています。
Step2:それぞれの次数が何個ずつあるのかを確認(次数列の確認)
つぎにそれぞれのグラフにおいて、各点における次数が何個ずつあるのかを確認します。
確認する際には次数列*5を列挙するのがおすすめです。
今回のグラフの場合は、次数列が
左:4,3,2,2,2,2,2
右:3,3,3,3,2,2,2
となり、次数列が異なるので2つのグラフは同型ではないことがわかります。
もう1つ別のグラフで試してみましょう。
この2つが同型かどうかを調べてみましょう。
Step1:辺の数、点の数を確認
ともに点が8個、辺が12個なのでOK。
Step2:次数列を確認
次数列もともに 4,4,4,4,3,3,3,3 になるのでOK。
しかし、ここまで調べても同型かどうかはわかりません。
Step3:同じ次数の点の隣接する点の次数の組み合わせをチェック
2つのグラフはともに次数4の点が4つ、次数3の点も4つありましたね。
なので次数ごとに隣接する点の次数の組み合わせをチェックします。
今回の場合、左側のグラフの次数4の点に注目すると、4つとも次数4の点2つと次数3の点2つと隣接しています。しかし、右側のグラフの次数4の点に注目すると、4つとも次数4の点1つと次数3の点3つと隣接していますね。
なので同型ではないことが示せましたね。
このように同型かの判断は3ステップで行うことができるのです。
今の3ステップをまとめてみましょう。
つぎの手順で同型かどうかを判定すると、比較的早く同型かどうかを見つけられる。
(順番にチェックしていって、該当しないものがあった時点で同型ではないことがわかる)
- それぞれのグラフの点の数、辺の数が同じかを確認。
- それぞれのグラフの次数列が同じになるかを確認。
(次数列ではなくても、それぞれの次数が何個あるかを確認して2つの次数で完全一致するかどうかを確認すればいい。) - 同じ次数の点に対して、それぞれの点に隣接する点の次数を比べて一致するかを確認
(基本的に同型ではないグラフのほとんどは2までで判明するはずです)
同型の判定
6.正則グラフ
(1) 正則グラフとは
あるグラフのすべての点における次数が同じようなグラフのことを正則グラフと呼びます。それぞれの次数がすべて
あるグラフ
正則グラフの例を3つほど下に載せておきます。
(オレンジ色の数字は次数を表しています)
(2) 完全グラフ・完全2部グラフと正則グラフの関係
完全グラフと正則グラフ
なので、完全グラフ
例えば、
完全2部グラフと正則グラフ
このとき、それぞれの
なので、
なので、完全2部グラフ
完全グラフ
また、完全グラフ
7.補グラフ
あるグラフにおいて、もともと辺があった場所の辺をなくし、もともと辺がなかった場所の辺をつけた(辺の有無を反対にしたような)グラフのことを補グラフと呼びます。
定義でも書いてみましょう。
グラフ
補グラフのイメージは、完全グラフからもとのグラフを引いたものと覚えておくとわかりやすいと思います。
補グラフには、以下のような連結性の定理も成り立ちます。
グラフ
簡単に理由を説明したいと思います。
もとのグラフ
下の図のように非連結グラフは、2つ以上の連結成分に分けることができます。これを
非連結グラフの補グラフを取ると、任意のグループ同士の2点を他のグループの点を経由して戻ってくることができますね。
(任意のグループ同士の2点
上の図の場合、例えば
(
そのため、もとのグラフ
8.練習問題
では、6問ほど練習しましょう。
少し多めですが、がんばりましょう。
練習1
次の①〜④のグラフがある。これについて、次の問いに答えなさい。
(1) 完全グラフを1つ選びなさい。
(2) 2部グラフをすべて選びなさい。
(3) 正則グラフになるものをすべて選び、何次の正則グラフになるかを答えなさい。
(4) 互いに同型となるペアを1つ見つけなさい。
練習2
つぎの問いに答えなさい。
(1) 完全グラフ
(2) 完全2部グラフ
練習3
5つの点からなる3次の正則グラフがあれば求め、なければその理由を書きなさい。
練習4
同型でない4点からなる連結グラフをすべて求め、さらにそれぞれのグラフに対して補グラフを書きなさい。
練習5
2つのグラフの点の数と辺の数が等しいからといって同型とは限らないことを示したい。点の数と辺の数は等しいが同型ではないグラフのペアを1つ書きなさい。
練習6
点数が6のグラフの中で、同型でない正則グラフは何個あるか答えなさい。
ヒント:補グラフをうまく使いましょう。
9.練習問題の答え
解答1
(1)
解答:①
1は
(2)
解答:②・③
(実は両方とも完全2部グラフ
それぞれの点に0, 1を書いていくと、②以外は緑色の点に0,1どちらを入れても0同士、1同士が接続してしまい、2部グラフにならないため。
①、③、④にはそれぞれ長さ3の閉路をもつため、2部グラフではない。なので答えは②。
(3)
解答:①・②・③(すべて3次の正則グラフ)
それぞれの点における次数は下の通りとなる。
よってすべての点における次数が3である①、②、③が3次の正則グラフとなる。
(4)
解答:②と③
①は点の数が異なるので同型ではない。また、④も次数列(それぞれの次数における点の数)が異なるので同型ではない。よって残った②と③が同型。
解答2
つぎの問いに答えなさい。
(1)
解答:45個
(2)
解答:48個
解答3
解答:存在しない
理由:5つの点からなる3次の正則グラフということは次数の和が15となる。しかし、どのようなグラフであっても次数の和は偶数となる必要がある(握手定理)ため、次数の和が15となるようなグラフは書けないから。
解答4
4点からなる連結グラフを上に、それぞれの補グラフを下にすべて記した。
解答5
例えば、下の2つのグラフなどがある。
(オレンジ色の数字は各点における次数を表す。)
2つのグラフは辺の数が4、点の数も4のグラフである。
しかし、左のグラフはすべて次数が2に対し、右のグラフは次数が2でない点がある、なので同型ではない*7。
解答6
0-正則グラフ〜 2-正則グラフまでは下のように書くことができます。
しかし、3-正則グラフ、4-正則グラフのような次数が大きいグラフとなると同型かどうかの判断が難しくなってしまいます。
そこで、元のグラフの補グラフを取ることを考えてみましょう。
点数が6の完全グラフ
(わからなければ実際に書いてみましょう)
補グラフは、完全グラフから元のグラフを引いたものなので、次数も完全グラフから元のグラフを引いたものになります。
つまり、3-正則グラフ〜5-正則グラフは、0-正則グラフ〜2-正則グラフの補グラフを取ることで求めることができます。
よって点数が6の正則グラフは全部で8個あることがわかります。
10.さいごに
今回も離散数学(グラフ理論)におけるグラフの基本用語についてまとめていきました。
今回で基本用語に関する説明はおしまいです!
次回は一筆書きができるようなグラフの判定法などをまとめていきたいと思います。
ではまた次回、さらば。
*1:たどるためには
*2:普通に
*3:有機化学の構造式を書くときのルールに似てますね。
*4:述語論理を使って書くと、
*5:グラフの各点におけるそれぞれの次数を大きい順に並べたもの。例えば、下のような図の場合、各点における次数は1, 4, 2, 2, 3なので次数列はそれぞれの次数を大きい順に並び替えた4,3,2,2,1となる。
*6:普通に
*7:それぞれの次数列は、2,2,2,2と3,2,2,1と異なるため同型ではない、などでもOK
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