スポンサードリンク

こんにちは、ももやまです。
今回は、対角化の中でも、直交行列を用いた対角化についてのまとめです。

前回の記事(第16羽 行列の対角化)はこちら↓

www.momoyama-usagi.com

スポンサードリンク

1.直交行列で対角化できる条件

直交行列の対角化を行うためには通常の対角化に比べ、対角化を行う行列 \( A \) に対し、より厳しい条件が課せられます。

直交行列の対角化

行列 \( A \) が実対称行列(\( A = {}^t\!A \))を満たすとき、直交行列*1 \( P \) を用いて、\( P^{-1} AP \) と対角化をすることができる。

もちろん直交行列で対角化できるような行列(つまり実対称行列)は普通に対角化を行うこともできます

実対称行列についてはこちらの記事を、直交行列についてはこちらの記事をご覧ください。

スポンサードリンク

2.直交行列の対角化(重解なしの場合)

では、まずは固有値の重解がない場合の例題を解きながら直交行列の対角化の流れを理解しましょう。

例題1

行列\[
A = \left( \begin{array}{ccc} 5 & 2 \\ 2 & 2 \end{array} \right)
\]が実対称行列であることを確かめ、直交行列 \( P \) を用いて対角化しなさい。

解説1

行列 \( A \) と転置行列 \(  {}^t\!A \) は等しくなりますね。
なので、直交行列を用いた対角化を行うことができます。

固有値を \( t \) とすると、固有方程式は、\[\begin{align*}
|A-tE| = & \left| \begin{array}{ccc} 5-t & 2 \\ 2 & 2-t \end{array} \right|
\\ = & (t-5)(t-2) - 4
\\ = & t^2-7t +6
\\ = & (t-1)(t-6) = 0
\end{align*} \]より固有値は1, 6となる。

(固有値を出すまでは通常の対角化と同じ流れです。)

つぎに、固有ベクトルを求めていきます。

前回は正則行列 \( P \) での対角化なので固有ベクトルの大きさは考えなくてもOKでしたが、今回は直交行列 \( P \) を用いた対角化のため、それぞれの固有ベクトルを正規直交基底にする必要があります。そのため、それぞれの固有ベクトルの大きさは1でなければなりません。

まず、固有値が1のときの固有ベクトルを求めましょう。

固有値が1のときの固有ベクトルは、\[ \begin{align*}
(A-1E) = \ &
\left( \begin{array}{ccc} 4 & 2 \\ 2 & 1  \end{array} \right) \\ \to \ &
\left( \begin{array}{ccc} 2 & 1 \\ 0 & 0  \end{array} \right)
\end{align*} \]となる。\[
2x + y = 0
\]を解くと、任意定数 \( k \) を用いて\[
\left( \begin{array}{ccc} x \\ y  \end{array} \right) = k \left( \begin{array}{ccc} 1 \\ -2 \end{array} \right)
\]と表せます。

固有ベクトル \( \vec{p_1} \) は大きさを1に正規化したベクトルなので、\[
\vec{p_1} = \frac{1}{\sqrt{5}}\left( \begin{array}{ccc} 1 \\ -2  \end{array} \right)
\]となる*2

つぎに固有値が6のときの固有ベクトルを求めましょう。

固有値が6のときの固有ベクトルは、\[ \begin{align*}
(A-6E) = \ &
\left( \begin{array}{ccc} -1 & 2 \\ 2 & -4  \end{array} \right) \\ \to \ &
\left( \begin{array}{ccc} 1 & -2 \\ 0 & 0  \end{array} \right)
\end{align*} \]となる。\[
x - 2y = 0
\]を解くと、任意定数 \( k \) を用いて\[
\left( \begin{array}{ccc} x \\ y  \end{array} \right) = k \left( \begin{array}{ccc} 2 \\ 1 \end{array} \right)
\]と表せます。

大きさを1に正規化した固有ベクトル \( \vec{p_2} \) は、\[
\vec{p_2} = \frac{1}{\sqrt{5}} \left( \begin{array}{ccc} 2 \\ 1 \end{array} \right)
\]となる。

ここで \( \vec{p_1} \), \( \vec{p_2} \) が正規直交基底になることを確認しましょう。

それぞれのベクトルは正規化済なので大きさが1である確認は不要です。

あとは \( \vec{p_1} \) と \( \vec{p_2} \) が直交することを確認するだけです。\[
\vec{p_1} \cdot \vec{p_2} = \left( \begin{array}{ccc} 1 & -2 \end{array} \right) \left( \begin{array}{ccc} 2 \\ 1  \end{array} \right) = 0
\]となり、\( \vec{p_1} \), \( \vec{p_2} \) は直交しますね。

よって、\( \vec{p_1} \), \( \vec{p_2} \) は正規直交基底となるので、直交行列\[
P = \left( \vec{p_1}, \vec{p_2} \right) = \frac{1}{\sqrt{5}} \left( \begin{array}{ccc} 1 & 2 \\ -2 & 1 \end{array} \right)
\]を用いて、\[
P^{-1} AP = \left( \begin{array}{ccc} 1 & 0 \\ 0 & 6  \end{array} \right)
\]と対角化することができます。*3

さて、先ほど固有値の異なる固有ベクトル \( \vec{p_1} \), \( \vec{p_2} \) は互いに直交することを確認しましたね。しかしこれは偶然なのでしょうか?

実は、実対称行列の場合、異なる固有値に対する固有ベクトルは必ず直交します。簡単に証明してみましょう。

[証明] (余裕ない人は飛ばしてOKです)

実対称行列 \( A \) の固有値 \( \alpha \) に対する固有ベクトルを \( \vec{p_1} \)、固有値 \( \beta \) に対する固有ベクトルを \( \vec{p_2} \)とします(ただし \( \alpha \not = \beta \) とする)。すると、\[
A \vec{p_1} = \alpha \vec{p_1} \ \ \ A \vec{p_2} = \beta \vec{p_2}
\]が成立しますね。

ここで内積には、\[\begin{align*}
\left(A \vec{p_1} \right) \cdot \vec{p_2} &  = \vec{p_1} \cdot \left( {}^t\!A \vec{p_2} \right) \\ & =
k \left( \vec{p_1} \cdot \vec{p_2} \right) = k \vec{p_1} \cdot \vec{p_2}
\end{align*}\]が成立します。

さらに実対象行列なので、\( A = {}^t\!A \) ですね。つまり、\[
\left(A \vec{p_1} \right) \cdot \vec{p_2} = \vec{p_1} \cdot \left( A \vec{p_2} \right)
\]となります。

さらに、\[\begin{align*}
\left( A \vec{p_1} \cdot \vec{p_2} \right) & =
\left(\alpha \vec{p_1} \right) \cdot \vec{p_2}
\\ & = \alpha \left( \vec{p_1} \cdot \vec{p_2} \right)
\end{align*} \] \[\begin{align*}
\vec{p_1} \cdot  \left( A \vec{p_2} \right) & =
\vec{p_1} \cdot  \left( \beta \vec{p_2} \right)
\\ & = \beta \left( \vec{p_1} \cdot \vec{p_2} \right)
\end{align*} \]

なので、\[ \begin{align*}
\alpha \left( \vec{p_1} \cdot \vec{p_2} \right)  = &
\left( A \vec{p_1} \cdot \vec{p_2} \right)
\\ = & \vec{p_1} \cdot \left( A \vec{p_2} \right)
\\ = & \beta \left( \vec{p_1} \cdot \vec{p_2} \right)
\end{align*} \]となりますね。つまり、\[
( \alpha - \beta ) \left( \vec{p_1} \cdot \vec{p_2} \right) = 0
\]となります。

ここで、固有値 \( \alpha \), \( \beta \) は互いにことなるので、両辺を \( \alpha - \beta \) で割り、\[\vec{p_1} \cdot \vec{p_2} = 0
\]となるので異なる固有値に属する固有ベクトル \( \vec{p_1} \), \( \vec{p_2} \) が直交することが示せましたね*4

[証明終わり]

異なる固有値に対する固有ベクトルは必ず直交する実対称行列と固有ベクトルの直交性

スポンサードリンク

3.直交行列の対角化(重解ありの場合)

つぎに固有値が重解となる場合の直交行列を用いた対角化について説明していきたいとおもいます。

固有値が重解の場合、同じ固有値に対する固有ベクトルは直交していないため、グラムシュミットの直交化法を用いて同じ固有値同士の固有ベクトルを直交化させる必要があります。

グラムシュミットの直交化を忘れてしまった(orよくわかんない)という人はこちらの記事で確認をお願いします↓

www.momoyama-usagi.com

例題2

行列\[
A = \left( \begin{array}{ccc} 3 & 2 & 2 \\ 2 & 3 & 2 \\ 2 & 2 & 3  \end{array} \right)
\]が実対称行列であることを確かめ、直交行列 \( P \) を用いて対角化しなさい。

解説2

まずは、いつもどおり固有値を求めていきます。

固有値を \( t \) とすると、固有方程式は、\[ \begin{align*}
|A - tE| & = \left| \begin{array}{ccc} 3-t_{+2+2} & 2_{+3-t+2} & 2_{+2+3-t} \\ 2 & 3-t & 2 \\ 2 & 2 & 3-t \end{array} \right|
\\ & = \left| \begin{array}{ccc} 7-t & 7-t & 7-t \\ 2 & 3-t & 2 \\ 2 & 2 & 3-t \end{array} \right|
\\ & = (7-t) \left| \begin{array}{ccc} 1 & 1 & 1 \\ 2_{-2} & 3-t_{-2} & 2_{-2} \\ 2_{-2} & 2_{-2} & 3-t_{-2} \end{array} \right|
\\ & = (7-t) \left| \begin{array}{ccc} 1 & 1 & 1 \\ 0 & 1-t & 0 \\ 0 & 0 & 1-t \end{array} \right|
\\ & = (1-t)^2 (7-t) = 0
\end{align*}\]となる*5。ので、固有値は1(2重解)と7になる。

つぎに固有ベクトルを求めていく。

(1) 固有値が1(2重解)のとき(2重解)

\[ \begin{align*}
(A-1E) = \ &
\left( \begin{array}{ccc} 2 & 2 & 2 \\ 2 & 2 & 2 \\ 2 & 2 & 2 \end{array} \right) \\ \to \ &
\left( \begin{array}{ccc} 1 & 1 & 1 \\ 0 & 0 & 0 \\ 0 & 0 & 0 \end{array} \right)
\end{align*} \]となる。\[
x + y + z = 0
\]を解くと任意定数 \( s \), \( t \) を用いて\[
\left( \begin{array}{ccc} x \\ y \\ z \end{array} \right) = s \left( \begin{array}{ccc} 1 \\ -1 \\ 0 \end{array} \right) + t \left( \begin{array}{ccc} 1 \\ 0 \\ -1 \end{array} \right)
\]となる。

ここで、ベクトル\[
\vec{a_1} = \left( \begin{array}{ccc} 1 \\ -1 \\ 0   \end{array} \right) \ \ \
\vec{a_2} = \left( \begin{array}{ccc} 1 \\ 0 \\ -1   \end{array} \right)
\]は固有ベクトルだが、互いに直交していない。なので、グラムシュミットを用いることで \( \vec{a_1} \), \( \vec{a_2} \) を正規直交化し、正規直交するような固有ベクトルを求める。

\( \vec{a_1} \), \( \vec{a_2} \) を正規直交化したベクトルを \( \vec{p_1} \), \( \vec{p_2} \) とする。\[
\vec{p_1} = \frac{1}{ |\vec{a_1}| } \vec{a_1} = \frac{1}{ \sqrt{2} } \left( \begin{array}{ccc} 1 \\ -1 \\ 0  \end{array} \right)
\]となる。

\[
\vec{a_2} \cdot \vec{u_1} = \frac{1}{ \sqrt{2} } = \frac{1}{ \sqrt{2} }
\]なので、\[\begin{align*}
\vec{b_2} & = \vec{a_2} - \left( \vec{a_2} \cdot \vec{u_1} \right) \vec{u_1}
\\ & = \left( \begin{array}{ccc} 1 \\ 0 \\ -1  \end{array} \right) - \frac{1}{ \sqrt{2} }\cdot \frac{1}{ \sqrt{2} } \left( \begin{array}{ccc} 1 \\ -1 \\ 0  \end{array} \right)
\\ & =  \frac{1}{2} \left( \begin{array}{ccc} 2 \\ 0 \\ -2  \end{array} \right) - \frac{1}{2} \left( \begin{array}{ccc} 1 \\ -1 \\ 0  \end{array} \right)
\\ & = \frac{1}{2} \left( \begin{array}{ccc} 1 \\ 1 \\ -2  \end{array} \right)
\end{align*} \]となる。

よって、\[ \vec{p_2} = \frac{1}{ | \vec{b_2} | } \]\[ \vec{p_2} = \frac{1}{ \sqrt{6} } \left( \begin{array}{ccc} 1 \\ 1 \\ -2  \end{array} \right)  \]となる。

よって、正規直交化された固有ベクトルは、\[
\vec{p_1} = \frac{1}{ \sqrt{2} } \left( \begin{array}{ccc} 1 \\ -1 \\ 0  \end{array} \right)  , \ \ \ \ \vec{p_2} = \frac{1}{ \sqrt{6} } \left( \begin{array}{ccc} 1 \\ 1 \\ -2  \end{array} \right)
\]となる。

(2) 固有値が7のとき

重解ではないのでただ正規化するだけでOK。

\[ \begin{align*}
(A-7E) = \ &
\left( \begin{array}{ccc} -4_{+4} & 2_{-8} & 2_{+4} \\ 2_{-2} & -4_{-2} & 2_{+4} \\ 2 & 2 & -4 \end{array} \right) \\ \to \ &
\left( \begin{array}{ccc} 0 & -6 & 6 \\ 0 & -6 & 6 \\ 2 & 2 & -4 \end{array} \right) \\ \to \ &
\left( \begin{array}{ccc} 0 & -6 & 6 \\ 0 & -6_{+6} & 6_{-6} \\ 2 & 2_{-2} & -4_{+2} \end{array} \right)  \\ \to \ &
\left( \begin{array}{ccc} 0 & -1 & 1 \\ 0 & 0 & 0 \\ 2 & 0 & -2 \end{array} \right)  \\ \to \ &
\left( \begin{array}{ccc} 1 & 0 & -1 \\ 0 & 1 & -1 \\ 0 & 0 & 0 \end{array} \right)
\end{align*} \]となる。\[
\left\{ \begin{array}{l} x - z = 0 \\ y - z = 0 \end{array}\right.
\]を解くと任意定数 \( k \) を用いて\[
\left( \begin{array}{ccc} x \\ y \\ z \end{array} \right) = k \left( \begin{array}{ccc} 1 \\ 1 \\ 1 \end{array} \right)
\]となる。

大きさを1に正規化した固有ベクトル \( \vec{p_3} \) は、\[
\vec{p_3} = \frac{1}{\sqrt{3}} \left( \begin{array}{ccc} 1 \\ 1 \\ 1 \end{array} \right)
\]となる。

よって、\( \vec{p_1} \), \( \vec{p_2} \), \( \vec{p_3} \) は正規直交基底となるので、直交行列\[
P = \left( \vec{p_1}, \vec{p_2}, \vec{p_3} \right) = \frac{1}{\sqrt{6}} \left( \begin{array}{ccc} \sqrt{3} & 1 & \sqrt{2} \\ - \sqrt{3} & 1 & \sqrt{2} \\ 0 & -2 & \sqrt{2} \end{array} \right)
\]を用いて、\[
P^{-1} AP = \left( \begin{array}{ccc} 1 & 0 & 0 \\ 0 & 1 & 0 \\ 0 & 0 & 7  \end{array} \right)
\]と対角化することができます。

[検算] \[
AP = PD =  \frac{1}{ \sqrt{6} } \left( \begin{array}{ccc}  \sqrt{3} & 1 & 7 \sqrt{2} \\ - \sqrt{3} & 1  & 7 \sqrt{2} \\ 0 & -2 & 7 \sqrt{2}  \end{array} \right)
\]

4.練習問題

では、2問ほど練習をしましょう。

1問は2次正方行列、もう1問は3次正方行列です。

練習1

行列\[
A = \left( \begin{array}{ccc} 3 & 1 \\ 1 & 3  \end{array} \right)
\]を直交行列 \( P \) を用いて対角化しなさい。

練習2

行列\[
A = \left( \begin{array}{ccc} 3 & 2 & -1 \\ 2 & 0 & 2 \\ -1 & 2 & 3  \end{array} \right)
\]を直交行列 \( P \) を用いて対角化しなさい。

5.練習問題の答え

対角化したあとは必ず \( AP = PD \) を計算して正しく対角化できているかを検算しましょう!*6( \( P \) がルートになるので若干検算がめんどくさくなりますが……)

解説1

固有値を \( t \) とすると、固有方程式は、\[\begin{align*}
|A-tE| = & \left| \begin{array}{ccc} 3-t & 1 \\ 1 & 3-t \end{array} \right|
\\ = & (t-3)^2 - 1
\\ = & t^2 - 6t + 8
\\ = & (t-2)(t-4) = 0
\end{align*} \]より固有値は2, 4となる。

つぎに、\( \vec{p_1} \), \( \vec{p_2} \) が正規直交基底となるような固有ベクトルをもとめる。

(1) 固有値が2のとき\[ \begin{align*}
(A-2E) = \ &
\left( \begin{array}{ccc} 1 & 1 \\ 1 & 1  \end{array} \right) \\ \to \ &
\left( \begin{array}{ccc} 1 & 1 \\ 0 & 0  \end{array} \right)
\end{align*} \]となる。\[
x + y = 0
\]を解くと、任意定数 \( k \) を用いて\[
\left( \begin{array}{ccc} x \\ y  \end{array} \right) = k \left( \begin{array}{ccc} 1 \\ -1 \end{array} \right)
\]と表せる。

固有ベクトル \( \vec{p_1} \) は大きさを1に正規化したベクトルなので、\[
\vec{p_1} = \frac{1}{\sqrt{2}}\left( \begin{array}{ccc} 1 \\ -1  \end{array} \right)
\]となる。

(2) 固有値が4のとき\[ \begin{align*}
(A-4E) = \ &
\left( \begin{array}{ccc} -1 & 1 \\ 1 & -1  \end{array} \right) \\ \to \ &
\left( \begin{array}{ccc} 1 & -1 \\ 0 & 0  \end{array} \right)
\end{align*} \]となる。\[
x - y = 0
\]を解くと、任意定数 \( k \) を用いて\[
\left( \begin{array}{ccc} x \\ y  \end{array} \right) = k \left( \begin{array}{ccc} 1 \\ 1 \end{array} \right)
\]と表せる。

固有ベクトル \( \vec{p_1} \) は大きさを1に正規化したベクトルなので、\[
\vec{p_1} = \frac{1}{\sqrt{2}}\left( \begin{array}{ccc} 1 \\ 1  \end{array} \right)
\]となる。

よって、\( \vec{p_1} \), \( \vec{p_2} \) は正規直交基底となるので、直交行列\[
P = \left( \vec{p_1}, \vec{p_2} \right) = \frac{1}{\sqrt{2}} \left( \begin{array}{ccc} 1 & 1 \\ -1 & 1 \end{array} \right)
\]を用いて、\[
P^{-1} AP = \left( \begin{array}{ccc} 2 & 0 \\ 0 & 4  \end{array} \right)
\]と対角化することができます。

[検算] \[
AP = PD =  \frac{1}{ \sqrt{2} } \left( \begin{array}{ccc} 2 & 4 \\ -2 & 4 \end{array} \right)
\]となるので対角化が正しいことがわかる。

解説2

固有値を \( t \) とすると、固有方程式は、\[ \begin{align*}
|A - tE| & = \left| \begin{array}{ccc} 3-t & 2 & -1 \\ 2 & -t & 2 \\ -1 & 2 & 3-t \end{array} \right|
\\ & = \left| \begin{array}{ccc} 3-t_{+1} & 2_{-2} & -1_{t-3} \\ 2 & -t & 2 \\ -1 & 2 & 3-t \end{array} \right|
\\ & = \left| \begin{array}{ccc} 3-t_{+1} & 2_{-2} & -1_{t-3} \\ 2 & -t & 2 \\ -1 & 2 & 3-t \end{array} \right|
\\ & = \left| \begin{array}{ccc} 4-t & 0 & -4+t \\ 2 & -t & 2 \\ -1 & 2 & 3-t \end{array} \right|
\\ & = (4-t) \left| \begin{array}{ccc} 1 & 0 & -1 \\ 2_{-2} & -t & 2_{+2} \\ -1_{+1} & 2 & 3-t_{-1} \end{array} \right|
\\ & = (4-t) \left| \begin{array}{ccc} 1 & 0 & -1 \\ 0 & -t & 4 \\ 0 & 2 & 2-t \end{array} \right|
\\ & = (4-t) \left| \begin{array}{ccc}  -t & 4 \\ 2 & 2-t \end{array} \right|
\end{align*}\]となる。

ここで、\[\begin{align*} &
\left| \begin{array}{ccc} -t & 4 \\ 2 & 2-t \end{array} \right|
\\ = & t(t-2) - 8
\\ = & t^2 - 2t - 8
\\ = & (t+2)(t-4) = 0
\end{align*} \]となるので、\[
|A - tE| = (4-t)(t-4)(t+2) = -(t-4)^2 (t+2) = 0
\]を満たす \( t \) が固有値となり、固有値は4(2重解)と-2となる。

つぎに、\( \vec{p_1} \), \( \vec{p_2} \), \( \vec{p_3} \) が正規直交基底となるような固有ベクトルをもとめる。

(1) 固有値が4(2重解)のとき

\[ \begin{align*}
(A-1E) = \ &
\left( \begin{array}{ccc} -1 & 2 & -1 \\ 2 & -4 & 2 \\ -1 & 2 & -1 \end{array} \right) \\ \to \ &
\left( \begin{array}{ccc} 1 & -2 & 1 \\ 0 & 0 & 0 \\ 0 & 0 & 0 \end{array} \right)
\end{align*} \]となる。\[
x - 2y + z = 0
\]を解くと任意定数 \( s \), \( t \) を用いて\[
\left( \begin{array}{ccc} x \\ y \\ z \end{array} \right) = s \left( \begin{array}{ccc} 1 \\ 0 \\ -1 \end{array} \right) + t \left( \begin{array}{ccc} 2 \\ 1 \\ 0 \end{array} \right)
\]となる。

ここで、ベクトル\[
\vec{a_1} = \left( \begin{array}{ccc} 1 \\ 0 \\ -1   \end{array} \right) \ \ \
\vec{a_2} = \left( \begin{array}{ccc} 2 \\ 1 \\ 0   \end{array} \right)
\]をグラムシュミットを用いることで \( \vec{a_1} \), \( \vec{a_2} \) を正規直交化する。

\( \vec{a_1} \), \( \vec{a_2} \) を正規直交化した固有ベクトルを \( \vec{p_1} \), \( \vec{p_2} \) とする。\[
\vec{p_1} = \frac{1}{ |\vec{a_1}| } \vec{a_1} = \frac{1}{ \sqrt{2} } \left( \begin{array}{ccc} 1 \\ 0 \\ -1  \end{array} \right)
\]となる。

\[
\vec{a_2} \cdot \vec{u_1} = \frac{1}{ \sqrt{2} } = \frac{2}{ \sqrt{2} }
\]なので、\[\begin{align*}
\vec{b_2} & = \vec{a_2} - \left( \vec{a_2} \cdot \vec{u_1} \right) \vec{u_1}
\\ & = \left( \begin{array}{ccc} 2 \\ 1 \\ 0  \end{array} \right) - \frac{2}{ \sqrt{2} }\cdot \frac{1}{ \sqrt{2} } \left( \begin{array}{ccc} 1 \\ 0 \\ -1  \end{array} \right)
\\ & =  \left( \begin{array}{ccc} 2 \\ 1 \\ 0  \end{array} \right) -  \left( \begin{array}{ccc} 1 \\ 0 \\ -1  \end{array} \right)
\\ & = \left( \begin{array}{ccc} 1 \\ 1 \\ 1  \end{array} \right)
\end{align*} \]となる。

よって、\[ \vec{p_2} = \frac{1}{ | \vec{b_2} | } , \ \ \  \vec{p_2} = \frac{1}{ \sqrt{3} } \left( \begin{array}{ccc} 1 \\ 1 \\ 1  \end{array} \right)  \]となる。

よって、正規直交化された固有ベクトルは、\[
\vec{p_1} = \frac{1}{ \sqrt{2} } \left( \begin{array}{ccc} 1 \\ 0 \\ -1  \end{array} \right),  \ \ \ \vec{p_2} = \frac{1}{ \sqrt{3} } \left( \begin{array}{ccc} 1 \\ 1 \\ 1  \end{array} \right)
\]となる。

(2) 固有値が-2のとき

重解ではないのでただ正規化するだけでOK。

\[ \begin{align*}
(A-7E) = \ &
\left( \begin{array}{ccc} 5 & 2 & -1 \\ 2 & 2 & 2 \\ -1 & 2 & 5  \end{array} \right) \\ \to \ &
\left( \begin{array}{ccc} 5_{-5} & 2_{+10} & -1_{+25} \\ 2_{-2} & 2_{+4} & 2_{+10} \\ -1 & 2 & 5  \end{array} \right) \\ \to \ &
\left( \begin{array}{ccc} 0 & 12 & 24 \\ 0 & 6 & 12 \\ -1 & 2_{-2} & 5_{-4}  \end{array} \right) \\ \to \ &
\left( \begin{array}{ccc} 0 & 1 & 2 \\ 0 & 0 & 0 \\ -1 & 0 & 1  \end{array} \right) \\ \to \ &
\left( \begin{array}{ccc} 1 & 0 & -1 \\ 0 & 1 & 2 \\ 0 & 0 & 0 \end{array} \right)
\end{align*} \]となる。\[
\left\{ \begin{array}{l} x - z = 0 \\ y + 2z = 0 \end{array}\right.
\]を解くと任意定数 \( k \) を用いて\[
\left( \begin{array}{ccc} x \\ y \\ z \end{array} \right) = k \left( \begin{array}{ccc} 1 \\ -2 \\ 1 \end{array} \right)
\]となる。

大きさを1に正規化した固有ベクトル \( \vec{p_3} \) は、\[
\vec{p_3} = \frac{1}{\sqrt{6}} \left( \begin{array}{ccc} 1 \\ -2 \\ 1 \end{array} \right)
\]となる。

よって、\( \vec{p_1} \), \( \vec{p_2} \), \( \vec{p_3} \) は正規直交基底となるので、直交行列\[
P = \left( \vec{p_1}, \vec{p_2}, \vec{p_3} \right) = \frac{1}{\sqrt{6}} \left( \begin{array}{ccc} \sqrt{3} & \sqrt{2} & 1  \\ 0 & \sqrt{2} & -2 \\ -\sqrt{3} & \sqrt{2} & 1 \end{array} \right)
\]を用いて、\[
P^{-1} AP = \left( \begin{array}{ccc} 4 & 0 & 0 \\ 0 & 4 & 0 \\ 0 & 0 & -2  \end{array} \right)
\]と対角化することができます。

[検算] \[
AP = PD =  \frac{1}{ \sqrt{6} } \left( \begin{array}{ccc} 4 \sqrt{3} & 4 \sqrt{2} & -2 \\ 0 & 4 \sqrt{2} & 4 \\ -4 \sqrt{3} & 4 \sqrt{2} & -2  \end{array} \right)
\]

6.さいごに

今回は、直交行列を用いた対角化について説明しました。

直交行列の対角化は、2次形式を標準形にする際に必ず使うので覚えておきましょう。

また、直交行列 \( P \) で対角化を行うと、\( {}^t\!P = P^{-1} \) が成立するため、行列の \( n \) 乗などを計算する際に逆行列を簡単に求められるなどのメリットがあります。

次回は行列の対角化の応用として行列の \( n \) 乗を求める方法についてまとめたいと思います。

*1:直交行列は、\[ {}^t\!P P = E \ \ \ {}^t\!P = P^{-1}\]を満たすような行列のこと。

*2:正規化をする際には任意定数 \( k \) を考えずに\[\vec{b_1} = \left( \begin{array}{ccc} 1 \\ -2 \end{array} \right) \]を正規化することを考えればよい。この場合、\[ \frac{ \vec{b_1} }{ | \vec{b_1} | }\left( \begin{array}{ccc} 1 \\ -2 \end{array} \right) = \frac{1}{\sqrt{5}}\left( \begin{array}{ccc} 1 \\ -2  \end{array} \right) \]と正規化できる。(任意定数は定数倍を表しているだけなので正規化するときに消えるため。他の問題においても任意定数部分を無視して正規化するとよい。)

*3: [検算] \[
AP = PD =  \frac{1}{ \sqrt{5} } \left( \begin{array}{ccc} 1 & 12 \\ -2 & 6 \end{array} \right)
\]となるので対角化が正しいことがわかる。

*4:逆にいうと同じ固有値同士の場合、\( \alpha- \beta = 0 \) となり、\( \vec{p_1} \cdot \vec{p_2} = 0 \) が成立するとは限らないことがわかる。

*5:上三角行列、もしくは下三角行列の行列式は対角成分の積となるのを利用した。

*6:もちろん \( A \vec{p} = t \vec{p} \) で検算してもOK(行列と固有ベクトルの積は固有値倍されたベクトルに等しい)。

関連広告・スポンサードリンク

おすすめの記事