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こんにちは、ももやまです。
今回は、前回に引き続き連立微分方程式について説明していきたいと思います。
今回は、4つの連立微分方程式の解き方
- 高階(2階以上)微分方程式に変換する方法
- 行列の対角化・指数行列を用いる方法
- 微分演算子を用いる方法
- ラプラス変換を用いる方法(初期値が与えられているとき限定)
の「行列の対角化を用いる方法」について説明していきたいと思います。
前回の微分方程式の記事はこちら!
目次 [hide]
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1.行列を用いた連立方程式の表現
前回、2元(2つの式の)連立方程式を2階の微分方程式にしてから解く方法について説明しました。
しかし、式が3つ、4つ…と増えたらどうなるでしょう。
高階の微分方程式にするだけでも一苦労ですよね。
そこで、連立微分方程式を行列を用いて表してみましょう。
例えば、2元の連立方程式
この連立方程式は、
さらに、
(このときの行列
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2.対角化を用いた連立方程式の解き方
※ もし行列の対角化について忘れてしまった人は下の記事で必ず復習してからご覧ください。
行列を用いて連立微分方程式
例題1
連立微分方程式
(1) 行列
(2) (1)を用いて連立微分方程式の一般解を求めなさい。
(3) 初期条件
解説1
固有値を
早速解いていくと、
(固有値の総和は対角成分の総和(今回は2)に等しいことを必ず確認すること!)
つぎに、対応する固有値ごとに固有ベクトルを求める。
対応する固有値
(i) 固有値が-1のときの固有ベクトル
行列
(ii) 固有値が3のときの固有ベクトル
行列
よって、行列
(試験の際には
(2)
対角化の式
これを連立方程式
さらに左辺から
ここで、
よって、
※ 対角化後の行列の変形手順をまとめると下のようになります
ここで、
成分で表すと、
よって、
ここで、
(ただ一般解を求めるだけであれば逆行列
(3)
(2)の一般解に
また、 逆行列
よって、一般解は
なお、対角化できない行列の場合は例題1のような解き方はできないので注意してください。
(係数行列が対角化できない場合は、下で紹介する指数行列とジョルダン標準形の変形を利用することで一般解を求めます。)
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3.指数行列
(1) 指数行列の仕組みと重要な法則
連立微分方程式を行列を用いて
この式を
そこで、とある人が
この
行列
マクローリン展開について忘れてしまった人は下の記事で復習しましょう。
指数行列には様々な法則が成り立ちますが、その中でも特に重要な5つを紹介しましょう。
法則1:
※
法則2:
※
法則3:
※ 連立微分方程式を解く際や指数行列を求めるときに使う超重要公式!!
法則4:
※
法則5:
法則2を用いることで、連立微分方程式
(導出)
特に重要な法則3については導出を確認しておきましょう。
まず指数行列の定義式より、
ここで、
となるので、
よって、
(2) 主要な行列から指数行列への変換公式
まずは、主要な5つの行列に対しての指数行列の変形公式を確認しておきましょう。
この公式は指数行列を計算する上で重要になるので、必ず頭にいれておきましょう。
(公式1) 行列
(公式2) 行列
(公式3) 行列
(公式4) 行列
※ 行列
(※どちらかを頭にいれておけば
(公式5) 対角行列
(公式1を3次以上の正方行列に拡張)
公式1~公式4については、下で導出しているので余裕がある人は確認してみてもいいかもしれません。
余裕ないぜっていう人は公式1だけでも頭にいれておくといいです。
指数行列の計算例1
行列
定義に沿って計算すると、
また、
指数行列の計算例2
行列
定義に沿って計算すると、
また、
指数行列の計算例3
行列
定義に沿って計算すると、
また、
行列版オイラーの公式?
行列
ここで、
さらに面白いことに
指数行列の計算例4
行列
行列
また、
(指数関数の定理1:
よって、
また、
(3) 主要な公式以外の導出
先程は、定義式
しかし、いちいち定義式を変形して計算するのは結構めんどくさいです。
そこで、行列の対角化などにより
(ただし
例題で1つ試してみましょう。
例題2
行列
解説2
例題1より、行列
また、(公式1)より
さらに、
よって、
例題3~例題5でも、指数行列
4.指数行列を用いた連立微分方程式の解き方
指数行列を用いることで連立微分方程式
(初期値が与えられている場合は、
(1) 係数行列が対角化可能かつ固有値がすべて実数の場合
まずは、係数行列
なお、対角化可能の場合は、例題1のように解くことで指数行列
例題3
連立微分方程式
(1) 行列
(2) (1)を用いて連立微分方程式の一般解を求めなさい。
(3) 行列
解説3
(1)
固有値を
(検算:固有値の総和 = 対角成分の総和 = -1)
つぎに、対応する固有値ごとに固有ベクトルを求める。
(i) 固有値が3のときの固有ベクトル
行列
(ii) 固有値が-4のときの固有ベクトル
行列
よって、行列
(2)
連立方程式
また、対角化の式
また、公式1より
ここで、改めて任意定数を
(3)
よって、
(2) 係数行列が対角化できない場合
残念ながら、すべての行列が対角化できるとは限りません。
ですが、正則な行列
そこで、対角化ができない場合はジョルダン標準形を求め、
(ジョルダン標準形ってなんだっけ?もしくは忘れてしまったという人は下の記事で復習することをおすすめします。)
例題4
連立微分方程式
(1) 行列
(2) (1)を用いて連立微分方程式の一般解を求めなさい。
(3) 行列
解説4
(1)
固有値を
(検算:固有値の総和 = 対角成分の総和 = 4)
つぎに、対応する固有値ごとに固有ベクトルを求める。
(i) 固有値が4のときの固有ベクトル
行列
固有ベクトルが1本ないので対角化ができない。
そこで、
よって、
(2)
連立方程式
また、ジョルダン標準形の式
また、公式1より
ここで、改めて任意定数を
(3)
よって、
(3) 固有値が共役な複素数になる場合
※ 複素数計算に慣れていない人は、こちらの記事で練習をおすすめします。
行列
しかし、ここでは対角化ができる場合でもあえて対角化を行わないことを考えます。
ある固有値
すると、数式
ここで、固有ベクトル
すると、左辺は
よって、
ここで、
ここで、
というわけで、例題で確認してみましょう。
例題5
連立微分方程式
(1) 行列
(2) (1)を用いて連立微分方程式の一般解を求めなさい。
(3) 行列
解説5
(1)
固有値を
(検算:固有値の総和 = 対角成分の総和 = 2)
つぎに、対応する固有値ごとに固有ベクトルを求める。
ここで、計算のコツなのですが、固有値が複素数のときはすぐ行基本変形をせず、
(i) 固有値が 1+i のときの固有ベクトル
固有値が
よって固有ベクトル
(ii) 固有値が1-iのときの固有ベクトル
固有値が
よって固有ベクトル
(2)
ここで、固有値
ここで、固有ベクトル
すると、左辺は
よって、
ここで、
ここで、連立方程式
また、
また、公式1より
ここで、改めて任意定数を
(3)
よって、
5.非同次の連立微分方程式の解き方(おまけ)
ここで、同次形
ここで、任意定数ベクトル
(以下、
ここで、
これを与えられた式(1)に代入すると、
よって非同次形の連立微分方程式
軽く例題で計算過程の確認をしておきましょう。
例題6
連立微分方程式
このときの与えられた連立微分方程式の特殊解を1つ求めなさい。
ただし、必要であれば
解説6
特殊解の1つは
また、
(特殊解の1つを出すので任意定数を省略しています。)
よって、特殊解の1つは、
なお、非同次の2元連立微分方程式を行列を用いて解くのは計算量がかなり多くなってしまうため、あまりおすすめできません。
(非同次の2元連立微分方程式であれば、2次の微分方程式にしてから解くのがおすすめです。)
6.練習問題
では、実際に
- 対角化を用いて連立微分方程式を解く
- 指数行列の仕組みと導出
- 指数行列を用いて連立微分方程式を解く
練習をしてみましょう。
今回は、記事の分量の都合上、練習問題は別の記事にしております。
練習問題にチャレンジしたい人は下の記事をぜひご覧ください。
7.さいごに
かなり長い記事になってしまいましたが今回は、
- 対角化を用いて連立微分方程式を解く方法
- 指数行列の仕組みと導出方法
- 指数行列を用いて連立微分方程式を解く方法
について紹介しました。
対角化を用いて連立微分方程式を解く方法については期末試験でもよく出てくるので確実に復習しておきましょう。
指数行列については、仕組みをなんとなくで理解していただけたらOKです。
(おそらく期末試験には出ないと思うので… 院試なら必要かも。)
次回は、実際に対角化や指数行列を用いた連立微分方程式を解いたり、指数行列を求める計算演習問題を用意する予定です。
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