うさぎでもわかる解析 補充編1-1 双曲線関数のいろは

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こんにちは、ももやまです。

今回から3回に分けて双曲線関数についてみていきましょう。

双曲線関数の初回となる今回は、下の赤い部分について解説をしていきます。

  • 双曲線関数ってなに?
  • 双曲線関数のグラフ
  • 双曲線関数の基本変形公式
  • 双曲線関数の加法定理
  • 双曲線関数の2倍角・3倍角公式
  • 双曲線関数の積和公式
  • 双曲線関数の微分
  • 双曲線関数の積分
  • 双曲線関数のマクローリン展開
  • 双曲線関数の逆関数

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1. 双曲線関数ってなに??

(1) 双曲線関数が出てくるまで

[復習] 三角関数の定義

三角関数の cosθ, sinθ は、下のように単位円 x2+y2=1 上のある点 (x,y)(x,y)=(cosθ,sinθ) と定義することができます。

単位円を用いた三角関数の定義
(オレンジ色部分の面積は θ/2 となる)

ここで、θ は「x 軸」と「原点から (x,y) への線分」がなす角度に対応しています。さらに、「x 軸」、「原点から (x,y) への線分」、および「単位円の円周」に囲まれる部分の面積(オレンジ色部分)が θ2 になるのも特徴です。

また、cosθ, sinθ から tanθtanθ=sinθcosθとすることができます。

双曲線関数の定義

ここからが大学数学で出てくる新たな概念、双曲線関数の定義の説明に入ります。

まず、双曲線の中でも最も基本的な形 x2y2=1 を考えます。この双曲線のことを単位双曲線と名付けましょうか。

双曲線 x2y2=1 [単位双曲線とする]

この単位双曲線上のある点 (x,y) を1つの変数 θ(x,y)=(coshθ,sinhθ)と対応づけるような関数 coshθ, sinhθ のことを双曲線関数と呼びます。

coshθ, sinhθ の定義

さらにこの θ ですが、x 軸、原点と (x,y) のなす線分、双曲線 x2y2=1 が囲まれる部分が θ2 になる特徴があります。

ただし、三角関数のように θ が角度に対応しているわけではないことに要注意です。

また、双曲線関数には sinhθ, coshθ のほかに tanhθ もあり、tanhθ=sinhθcoshθで定義されます。

三角関数の公式tanθ=sinθcosθにそっくりですね。

双曲線関数の定義

単位双曲線 x2y2=1 に対して、(x,y)=(coshθ,sinhθ) と1つの変数 θ を用いて対応づけることを考える。

このときに出てくる coshθ, sinhθ のことを双曲線関数と呼ぶ。

※ 定義より、必ず cosh2θsinh2θ=1 が成立する[1]三角関数の cos2θ+sin2θ=1 に近い形。

また、双曲線関数には tanhθ もあり、tanhθ=sinhθcoshθで定義される。

※ これ以降双曲線関数は θ ではなく、x を用いて書くことにします。つまり、coshθ, sinhθ ではなく sinhx, coshx で書きます。

(2) 定義式の書き変え(この形で覚えよう)

cosh2xsinh2x=1 を満たすように sinhx, coshx を定義する、と言われても少し難しいですよね。

そこで、双曲線関数 sinhx, coshx ネイピア数 e を使うことで、次のように定義することもできます。

eを用いた sinh x, cosh x の定義

sinhx=exex2coshx=ex+ex2

さらに、tanhx=sinhxcoshxであることを利用して、tanhx はつぎのように定義されます。

eを用いた tanh x の定義

tanhx=sinhxcoshx ()=exexex+ex ()=e2x1e2x+1 ( ex )=1e2x1+e2x ( ex )

※ 一番上の形で覚えてから、残り3つは都度導出することをお勧めします。

(3) 練習問題にチャレンジ

ここで、双曲線関数に関する練習問題を1問解いてみましょう。

練習1

sinh1, cosh1, tanh1 の値を小数第2位まで求めなさい。ただし、 e=2.72, e1=0.37 とする。

[解説1]

定義式sinhx=exex2coshx=ex+ex2tanhx=exexex+exx=1 を代入してひたすら計算するだけ。

sinh1=e1e12=2.720.372=2.352=1.1751.18

cosh1=e1+e12=2.72+0.372=3.092=1.5451.55

tanh1=e1e1e1+e1=1.1751.5450.76

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2. 双曲線関数のグラフ

次に、双曲線関数 sinhx, coshx, tanhx がどのような値を取るかを見てみましょう。

赤色 → y=sinhx のグラフ(奇関数)
青色 → y=coshx のグラフ(偶関数)
緑色 → y=tanhx のグラフ(奇関数)

※ 偶関数は、y 軸対称のグラフで、f(x)=f(x) が成立する関数。
  奇関数は、原点対称のグラフで、f(x)=f(x) が成立する関数。

グラフの形の導出方法

微分をし、増減表を書くことで sinhx, coshx, tanhx のグラフを導出してみましょう。

sinh x のグラフ

f(x)=sinhx とする。

[極限計算]

f(x)=sinhx=12(exex)である。よって、limx12(ex0ex)=limx12(exex0)=となるので、x では f(x) は負の無限大、x では f(x) は正の無限大を取る。

[f(x) を計算し、グラフの傾きを求める]

f(x)=12(exex)を微分する。

f(x)=12(ex+ex)となるので、常に f(x)>0。よって、このグラフは単調増加。

[f(x) を計算し、グラフの凹凸を求める]

f(x) をさらにもう1回微分する。

f(x)=12(exex)となる。ここで、両辺を 2ex 倍、つまり2exf(x)=e2x1としても f(x) の正負は変わらないため、e2x1 の正負からグラフの凹凸を求める。

すると、

  • e2x1=0 を満たすような x は、x=0 となる。よって、x=0 は変曲点。
  • x>0 のとき、e2x1>0 を満たす。よって、f(x)>0 も満たすため、下に凸となる。
  • x<0 のとき、e2x1<0 を満たす。よって、f(x)<0 も満たすため、上に凸となる。

となる。

また、x=0 のとき、f(0)=sinh0=12(e0e0)=0となる。

よって、増減表は下のようになる。

sinhx の増減表

増減表より、sinhx のグラフを下のように導出ができる。

cosh x のグラフ

f(x)=coshx とする。

[極限計算]

f(x)=coshx=12(ex+ex)である。よって、limx12(ex0+ex)=limx12(exex0)=となるので、x では f(x) は正の無限大、x でも f(x) は正の無限大を取る。

[f(x) を計算し、グラフの傾きを求める]

f(x)=12(ex+ex)を微分する。

f(x)=12(exex)となる。ここで、両辺を 2ex 倍、つまり2exf(x)=e2x1としても f(x) の正負は変わらないため、e2x1 の正負からグラフの傾きを求める。

すると、

  • e2x1=0 を満たすような x は、x=0 となる。よって、x=0 は極値。
  • x>0 のとき、e2x1>0 を満たす。よって、f(x)>0 も満たすため、この部分では単調増加。
  • x<0 のとき、e2x1<0 を満たす。よって、f(x)<0 も満たすため、この部分では単調減少。

となる。

[f(x) を計算し、グラフの凹凸を求める]

f(x)=12(ex+ex)となるので、常に f(x)>0。よって、このグラフは常に下に凸。

また、x=0 のとき、f(0)=cosh0=12(e0+e0)=1となる。

よって、増減表は下のようになる。

coshx の増減表

増減表より、coshx のグラフを下のように導出ができる。

tanh x のグラフ

f(x)=tanhx とする。

ここで、f(x)=sinhxcoshx=exexex+ex=e2x1e2x+1=1e2x1+e2xと4パターンの式に変形できることを思い出す。

[極限計算]

limxf(x)=limxe2x1e2x+1=010+1=1

limxf(x)=limx1e2x1+e2x=101+0=1

となるので、x では f(x) は-1、x では f(x) は1を取る。

[f(x) を計算し、グラフの傾きを求める]

f(x)=exexex+exを微分する。

f(x)=(exex)(ex+ex)(exex)(ex+ex)(ex+ex)2=(ex+ex)2(exex)2(ex+ex)2=(e2x+2+e2x)(e2x2+e2x)(ex+ex)2=4(ex+ex)2となる。

ここで、x の値にかかわらず、常に (ex+ex)2>0 なので、f(x) も常に f(x)>0 となる。よって、このグラフは単調増加である。

[f(x) を計算し、グラフの凹凸を求める]

f(x) をさらにもう1回微分する。

f(x)=(4)(ex+ex)24((ex+ex)2)(ex+ex)4=8(exex)(ex+ex)(ex+ex)4=8(exex)(ex+ex)3となる。

ここで、x の値にかかわらず、常に (ex+ex)3>0 なので[2]ex+ex>0 となるため。f(x) の正負を判定するためには 8(exex) の正負を考えればよい。

  • 8(exex)=0 を満たすような x は、両辺を 18ex 倍し、e2x1=0 とすることで x=0 と求められる。よって、x=0 は変曲点。
  • x>0 のとき、exex>0 となるので 8(exex)<0 を満たす。よって、f(x)<0 となるため、この部分では上に凸。
  • x<0 のとき、exex<0 となるので 8(exex)>0 を満たす。よって、f(x)>0 となるため、この部分では下に凸。

また、x=0 のとき、f(0)=tanh0=e0e0e0+e0=0となる。

よって、増減表は下のようになる。

tanhx の増減表

増減表より、tanhx のグラフを下のように導出ができる。

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3. 双曲線関数の基本変形公式

ここでは、双曲線関数 sinhx, coshx, tanhx の変形公式を三角関数の公式と比較していきながら見ていきましょう。

双曲線関数の基本変形公式

cosh2xsinh2x=1tanhx=sinhxcoshx1tanh2x=1cosh2x

[比較] 三角関数の基本変形公式

cos2x+sin2x=1tanx=sinxcosx1+tan2x=1cos2x

※ 色がついている部分が三角関数と微妙に違う部分です。

3番目の公式のみ、導出方法を載せておきます。

1tanh2x=1(sinhxcoshx)2=1sinh2xcosh2x=cosh2sinh2xcosh2x=1cosh2x

練習問題にチャレンジ

ここで、双曲線関数の基本変形についての練習問題を解いてみましょう。

練習2

次の(1), (2) の問いに答えなさい。

(1) sinhx=3 とする。このときの coshx, tanhx の値を求めなさい。

(2) tanhx=12 とする。このときの coshx, sinhx の値を求めなさい。

[解答]

(1)

基本公式 cosh2xsinh2x=1 を変形すると、cosh2x=1+sinh2x となる。

この式に sinhx=3 を代入すればOK。

よって、cosh2x=1+sinh2x=1+32=10

ここで、coshx>0 なので、coshx=10 となる。

また、tanhx=sinhxcoshx=310=31010と求められる。

(2)

基本公式 1tanh2x=1cosh2x を変形すると、cosh2x=11tanh2xとなる。

よって、\[cosh2x=11tanh2x=11(12)2=1114=134=43が成立。

ここで、coshx>0 なので、cosh=23=233と求められる。

さらに、基本公式 cosh2xsinh2x=1 を変形すると、sinh2x=cosh2x1 となる。よって、sinh2x=431=13となる。

ここで、tanhx>0 なので、sinhx>0 となる[3]sinhxcoshx と異なり、x の値によっては負の値を取ることもある。そのため、tanhx の正負(グラフより tanhx と \( \sinh x … Continue reading。よって、sinhx=13=33となる。

4. 双曲線関数の加法定理

続いて加法定理を見ていきましょう。

加法定理は、この後の公式(2倍角、3倍角、半角)などのベースとなる公式の上に、導出がめんどくさいので覚えてしまいましょう。

ただし、三角関数と基本的には似ていますが一部符号が異なる部分があるので注意です。

双曲線関数の加法定理

sinh(α+β)=sinhαcoshβ+coshαsinhβsinh(αβ)=sinhαcoshβcoshαsinhβcosh(α+β)=coshαcoshβ+sinhαsinhβcosh(αβ)=coshαcoshβsinhαsinhβtanh(α+β)=tanhα+tanhβ1+tanhαtanhβtanh(αβ)=tanhαtanhβ1tanhαtanhβ

[比較] 三角関数の加法定理

sin(α+β)=sinαcosβ+cosαsinβsin(αβ)=sinαcosβcosαsinβcos(α+β)=cosαcosβsinαsinβcos(αβ)=cosαcosβ+sinαsinβtan(α+β)=tanα+tanβ1tanαtanβtan(αβ)=tanαtanβ1+tanαtanβ

[証明]

[1] sinh(α+β)=sinhαcoshβ+coshαsinhβ の証明

()=eα+βeαβ2

()=(eαeα2)(eβ+eβ2)+(eα+eα2)(eβeβ2)=14(eα+β+eαβeα+βeαβ)+14(eα+βeαβ+eα+βeαβ)=24(eα+βeαβ)=eα+βeαβ2=()

[2] sinh(αβ)=sinhαcoshβcoshαsinhβ の証明 

()=eαβeα+β2

()=(eαeα2)(eβ+eβ2)+(eα+eα2)(eβeβ2)=14(eα+β+eαβeα+βeαβ)14(eα+βeαβ+eα+βeαβ)=24(eαβeα+β)=eαβeα+β2=()

[3] cosh(α+β)=coshαcoshβ+sinhαsinhβ の証明

()=eα+β+eαβ2

()=(eα+eα2)(eβ+eβ2)+(eαeα2)(eβeβ2)=14(eα+β+eαβ+eα+β+eαβ)+14(eα+βeαβeα+β+eαβ)=24(eα+β+eαβ)=eα+β+eαβ2=()

[4] cosh(αβ)=coshαcoshβsinhαsinhβ の証明

()=eαβ+eα+β2

()=(eα+eα2)(eβ+eβ2)+(eαeα2)(eβeβ2)=14(eα+β+eαβ+eα+β+eαβ)14(eα+βeαβeα+β+eαβ)=24(eαβ+eα+β)=eαβ+eα+β2=()

[5] tanh(α+β)=tanhα+tanhβ1+tanhαtanhβの証明

()=tanh(α+β)=sinh(α+β)cosh(α+β)=sinhαcoshβ+coshαsinhβcoshαcoshβ+sinhαsinhβ=(sinhαcoshβ+coshαsinhβ)1coshαcoshβ(coshαcoshβ+sinhαsinhβ)1coshαcoshβ=sinhαcoshα+sinhβcoshβ1+sinhαcoshαsinhβcoshβ=tanhα+tanhβ1+tanhαtanhβ=()

手順としては、

  1. tanhx=sinhxcoshx の公式を適用
  2. 加法定理で sinh(α+β), cosh(α+β) を分解する
  3. 分子分母 coshαcoshβ で割る

で証明が可能です。

[6] tanh(αβ)=tanhαtanhβ1tanhαtanhβの証明

()=tanh(αβ)=sinh(αβ)cosh(αβ)=sinhαcoshβcoshαsinhβcoshαcoshβsinhαsinhβ=(sinhαcoshβcoshαsinhβ)1coshαcoshβ(coshαcoshβsinhαsinhβ)1coshαcoshβ=sinhαcoshαsinhβcoshβ1sinhαcoshαsinhβcoshβ=tanhαtanhβ1tanhαtanhβ=()※ 符号が変わる以外は tanh(α+β) のときと証明過程は全く同じです。

5. 双曲線関数の2倍角公式

加法定理から簡単に導けるので覚える必要はありません。聞かれたら加法定理からその場で導出しましょう。

双曲線関数の2倍角公式

sinh2x=2sinhxcoshxcosh2x=cosh2x+sinh2x=2cosh2x1=1+2sinh2xtanh2x=2tanhx1+tanh2x

[比較] 三角関数の2倍角公式

sin2x=2sinxcosxcos2x=cos2xsin2x=2cos2x1=12sin2xtan2x=2tanx1tan2x

[1] sinh2x=2sinhxcoshx の導出

加法定理sinh(α+β)=sinhαcoshβ+coshαsinhβに、α=x, β=x を代入。

すると、sinh2x=sinh(x+x)=sinhxcoshx+coshxsinhx=2sinhxcoshxと導出できる。

[2] cosh2x=cosh2x+sinh2x の導出

加法定理cosh(α+β)=coshαcoshβ+sinhαsinhβに、α=x, β=x を代入。

すると、cosh2x=cosh(x+x)=coshxcoshx+sinhxsinhx=cosh2x+sinh2xと導出できる。

さらに、cosh2xsinh2x=1 を使うことで、残り2種類の公式も導出可能。

cosh2x=cosh2x+sinh2x=cosh2x+sinh2x1+(cosh2xsinh2x)=2cosh2x1

cosh2x=cosh2x+sinh2x=cosh2x+sinh2x+1(cosh2xsinh2x)=1+2sinh2x

[3] tanh2x=2tanhx1+tanh2x の導出

加法定理tanh(α+β)=tanhα+tanhβ1+tanhαtanhβに、α=x, β=x を代入。

tanh2x=tanh(x+x)=tanhx+tanhx1+tanhxtanhx=2tanhx1+tanh2x

6. 双曲線関数の3倍角公式

加法定理と2倍角の公式から導ける上に出てくる頻度がめったにないので覚える必要はありません。聞かれたら加法定理からその場で導出しましょう。

双曲線関数の3倍角公式

sinh3x=3sinhx+4sinh3xcosh3x=4cosh3x3coshxtanh3x=3tanhx+tanh3x1+3tanh2x

[比較] 三角関数の3倍角公式

sin3x=3sinx4sin3xcos3x=4cos3x3cosxtan3x=3tanxtan3x13tan2x

tan3x の加法定理は高校でも習っている人は少ないと思います。

[1] sinh3x=3sinhx+4sinh3x の導出

加法定理sinh(α+β)=sinhαcoshβ+coshαsinhβに、α=2x, β=x を代入。

さらに、倍角の公式、双曲線関数の基本変形公式sinh2x=2sinhxcoshxcosh2x=1+2sinh2xcosh2x=1+sinh2x   (cosh2xsinh2x=1)を利用。

すると、sinh3x=sinh(2x+x)=sinh2xcoshx+cosh2xsinhx=(2sinhxcoshx)coshx+(1+2sinh2x)sinhx=2sinhxcosh2x+sinhx+2sinh3x=2sinhx(1+sinh2x)+sinhx+2sinh3x=2sinhx+2sinh3x+sinhx+2sinh3x=3sinhx+4sinh3xと導出できる。

[2] cosh3x=4cosh3x3coshx の導出

加法定理cosh(α+β)=coshαcoshβ+sinhαsinhβに、α=2x, β=x を代入。

さらに、倍角の公式、双曲線関数の基本変形公式sinh2x=2sinhxcoshxcosh2x=2cosh2x1sinh2x=cosh2x1   (cosh2xsinh2x=1)を利用。

すると、cosh3x=cosh(2x+x)=cosh2xcoshx+sinh2xsinhx=cosh2xcoshx+sinh2xsinhx=(2cosh2x1)coshx+(2sinhxcoshx)sinhx=2cosh3xcoshx+2sinh2xcoshx=2cosh3xcoshx+2(cosh2x1)coshx=2cosh3xcoshx+2cosh3x2coshx=4cosh33coshxと導出できる。

[3] tanh3x=3tanhx+tanh3x1+3tanh2x の導出

加法定理tanh(α+β)=tanhα+tanhβ1+tanhαtanhβに、α=2x, β=x を代入。

さらに、倍角の公式tanh2x=2tanhx1+tanh2xを利用。

すると、tanh3x=tanh(2x+x)=tanh2x+tanx1+tanh2xtanhx=2tanhx1+tanh2x+tanhx1+2tanhx1+tanh2xtanhx=2tanhx+tanhx(1+tanh2x)1+tanh2x1+tanh2x+2tanh2x1+tanh2x=2tanhx+tanhx(1+tanh2x)1+tanh2x+2tanh2x=2tanhx+tanh+tanh3x1+3tanh2x=3tanhx+tanh3x1+3tanh2xと導出できる。

7. 双曲線関数の積和公式

積分をするときにもしかしたら使うかもしれない公式ですが、加法定理から導出できるので導出方法だけ確認しておきましょう。

双曲線関数の積和公式

sinhαcoshβ=12{sinh(α+β)+sinh(αβ)}coshαsinhβ=12{sinh(α+β)sinh(αβ)}coshαcoshβ=12{cosh(α+β)+cosh(αβ)}sinhαsinhβ=12{cosh(α+β)cosh(αβ)}

※ 4番目の公式のみ、三角関数の積和公式と符号が微妙に異なるため要注意。

[比較] 三角関数の積和公式

sinαcosβ=12{sin(α+β)+sin(αβ)}cosαsinβ=12{sin(α+β)sin(αβ)}cosαcosβ=12{cos(α+β)+cos(αβ)}sinαsinβ=12{cos(α+β)cos(αβ)}

tan3x の加法定理は高校でも習っている人は少ないと思います。

[1]sinhαcoshβ=12{sinh(α+β)+sinh(αβ)}の導出

[2]coshαsinhβ=12{sinh(α+β)sinh(αβ)}の導出

[3]coshαcoshβ=12{cosh(α+β)+cosh(αβ)}の導出

[4]sinhαsinhβ=12{cosh(α+β)cosh(αβ)}の導出

※ 練習問題は、補充編1-2(双曲線関数の微分積分編)で積分と共に出したいと思います。

8. さいごに

今回は、双曲線関数の中でも定義や基本的な公式を中心に解説をしていきました。

色々と説明しましたが、特に覚えていてほしいのは、

  • 双曲線関数の定義式(e を用いた形)
  • 双曲線関数のグラフの概形
  • 双曲線関数の基本公式
  • 双曲線関数の加法定理

の4つです。

この4種類の式は下にまとめているので、テスト前に見返す際などにご利用ください。

双曲線関数の基礎部分で覚えていてほしい式

[定義式]

sinhx=exex2coshx=ex+ex2tanhx=sinhxcoshx

[グラフの概形]

赤色 → y=sinhx のグラフ(奇関数)
青色 → y=coshx のグラフ(偶関数)
緑色 → y=tanhx のグラフ(奇関数)

[基本公式]

cosh2xsinh2x=1tanhx=sinhxcoshx1tanh2x=1cosh2x

[加法公式]

sinh(α+β)=sinhαcoshβ+coshαsinhβsinh(αβ)=sinhαcoshβcoshαsinhβcosh(α+β)=coshαcoshβ+sinhαsinhβcosh(αβ)=coshαcoshβsinhαsinhβtanh(α+β)=tanhα+tanhβ1+tanhαtanhβtanh(αβ)=tanhαtanhβ1tanhαtanhβ

次回(補充編1-2)では、双曲線関数の微分、積分、マクローリン展開について解説をしていきたいと思います。それではまた次回。

注釈

注釈
1 三角関数の cos2θ+sin2θ=1 に近い形。
2 ex+ex>0 となるため。
3 sinhxcoshx と異なり、x の値によっては負の値を取ることもある。そのため、tanhx の正負(グラフより tanhxsinhx の正負は一致する)を確認するか、tanhx=sinhxcoshxを計算することで sinhx の正負を確認する必要がある。もちろん、上の式を変形して sinhx=tanhxcoshx から sinhx を計算してもOK。

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