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2020年09月01日 諸事情により内容修正
2022年05月25日 改行バグを修正・行列を用いた計算方法のリンクを追加
こんにちは、ももやまです!
実験で出てくる「最小二乗法」ってとっても難しいですよね!
そこで、今回は実験やデータの分析でよく使う「最小二乗法」についてうさぎでもわかるように説明します!
目次 [hide]
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1.最小2乗法を使う理由
大学になると「基礎物理実験」で、物理実験をすることがありますね。
私も大学1年生のときに、未知の抵抗を渡され、抵抗を求めなさいと言われました。
ということで、今回は抵抗を例に説明して
中学生のときに抵抗を求める関係式
(
もしかしたら
では、この関係式
ちなみに
今回は抵抗
例えば、
ただし、こんなに都合よくオームの法則は成り立ちません。
成り立つのはセンター試験、二次試験などのテストくらいです。
ということで、オームの法則(理論値)と実世界の値はどれくらい異なるのかをここからとある方法を使ってみていきましょう。
ここで、1年生のときに実験で得た値を過去のレポートから引っ張り出してきました。
随分前のレポートなのですが、未だにパソコンに残っているとは思いませんでしたよほんとに。
電圧V [V] | 電流I [A] |
0.000 | -0.001 |
1.000 | 0.502 |
2.000 | 1.005 |
3.000 | 1.508 |
4.001 | 2.012 |
5.001 | 2.516 |
6.001 | 3.019 |
当然理論値ではありません。小数第2位やら3位やらに余計な値が残ってます。
つぎに、グラフ用紙の測定した箇所(対応する電圧と電流)に点を打ってみましょう。
ここで、心を小中学生に戻してみましょう。
いくつか点があると…、
こんな感じに定規でだいたいの点を通るような線を引きたくなりますよね。
線を引けば、だいたいの傾きがわかりますね。この傾きが
この「だいたいの点を通るけど、どうやって線を引けばどの点にも近くなるんだろう…」というのを数学的に求めるのが最小2乗法の仕組みです。
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2.最小2乗法の仕組み
ここから少し理論的なお話に入っていきます。眠くなりますね。
ある実験により得られたデータが
このとき、
この係数
次の章では、さらに詳しく最小2乗法を導出する計算法を見ていきましょう。
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3.最小2乗法を用いた計算法
測定の組
(ここでの
この誤差ができるだけ小さくなる(誤差が0に近づく)
実際は
しかし、上の式の場合、誤差
そのため、正の誤差と負の誤差が打ち消しあって、誤差がありまくりなのに0になる、というわけが分からないことがおこります。
そこで、誤差
(実は、分散を求めるときも偏差を2乗するのですが、まったく同じ理由で2乗を行っています。)
すると、式は
(2乗したものが最も小さくなるものを求めるため、最小2乗法と呼ばれます。)
ここで直線を、
(2変数関数というのは、2つの変数
2変数関数
極小値ということは、極値となりうる点(停留点)の中のどれかですね。
(停留点は解析学で習うと思います。「停留点ってなんだ?」と思った人のようなまだ習っていない人はこちらの記事で復習お願いします。)
さて、では停留点を求めていきましょう。
実際に計算すると、
シグマが多くてごちゃごちゃするので、シグマを別の記号 [ ] をつかって
先ほどの2つの関係式は
この2式はただの連立1次方程式なので、これを解くことで
実際に解いてみると、
これが、実験の教科書によく出てくる最小2乗法の計算式です。
4.具体例(電流と電圧)
電流と電圧の話に戻りましょう。
オームの法則の式は
しかし、実世界では「初期の起電力」というものが出てきます。
この起電力を
すると、この式は最小2乗法の式
この式の
(
実際に、最初に出した実験データから最小2乗法を使って抵抗
電流 I [A] | 電圧 V [V] |
-0.001 | 0.000 |
0.502 | 1.000 |
1.005 | 2.000 |
1.508 | 3.000 |
2.012 | 4.001 |
2.516 | 5.001 |
3.019 | 6.001 |
ここで、最小2乗法の式の
計算の注意点としては、
は を2乗したもの、 は各電流の値を2乗したものの総和と、互いに異なっているものを求めていること は、 ではなく、各データの電流値と電圧値をかけたものの総和であること
の2点に注意が必要です。
計算はめんどくさいと思うので手でせず、Excelやら電卓でやることをおすすめします。
ただし、Excelで行う場合は有効数字の処理に気を付けましょう。(round関数などできちんと有効数字の処理しましょう。)
有効数字がいまいちよくわかってない人はこちらの記事で確認しましょう!
実際に求めると、
あとは、実際に求めた値を代入し、
これが、最小2乗法の使い方の例です。
実は実験の後、教授から「この抵抗、本当は2[Ω]なんだよ~」と教えてくれました。
このように、実際の値かどうかはわからないが、表向きに言われている値のことを公称値とよびます*4。
2[Ω]だといわれている抵抗に対して、1.987[Ω] (相対誤差約1%) の結果が出せたのはなかなかな精度だと思います。
当時1年生だった私すごい!(すいませんでした。)
5.最小2乗法の応用
少し応用例も紹介してみましょう。
最小2乗法は、線形なもの(直線なもの)適用できないと思われがちですが、実は何個か式を挟むことで、線形以外なものにも適用することができます。
例えば、
この式を、
もう1つ比熱の式で例を出しましょう。比熱の式は、
さらに、
そのため、
6.最小2乗法の式の簡単化
先ほど紹介した最小2乗法の式
手計算をするのは言うまでもなく嫌だし、Excelなどで計算させるのもかなり式入力がめんどくさいですよね。
なので、この式を簡単化しましょう。
(1) 共分散
式を簡単化する前に、簡単化に使う共分散について説明しましょう。
共分散
この式を変形すると、
(2) 式の変形
では、実際に共分散を使って式を変形してみましょう。式変形がめんどくさいので基本的には結果だけわかればOKです。
(
同様に
ここから先は分子のみの変形を考える。
よって、
※変形はこちらのページを参考にさせていただきました!
参考文献:「Black学科へようこそ! 自然科学のための数学 最小2乗法」
(2019年9月29日アクセス)
よって、下のような結果が得られます。(結果が理解できれていれば十分です)
2つの測定の組
※
(こちらの方が簡単に求められますね!)
最小2乗法における回帰直線 y = ax + b の簡単な求め方
実際に第3章で計算したデータと同じ電圧と電流で正しい値がでるかを調べてみましょう。
(電流
電流 I [mA] | 電圧 V [V] |
0.000 | 0.000 |
0.502 | 1.000 |
1.005 | 2.000 |
1.508 | 3.000 |
2.012 | 4.001 |
2.516 | 5.001 |
3.019 | 6.001 |
すると、
同様に
先ほどの計算式より比較的ラクに計算できましたね!
(ちなみにExcelでは共分散は covar 関数、分散は var.p 関数を使ってラクラク計算することができます!)
おまけ
最小2乗法は、線形代数(行列やベクトル)の力を使うことで、行列を使って計算することもできます。
もし行列を使った最小2乗法の計算に興味がある方は、こちらの記事をご覧ください。
7.Excelで最小2乗法を自動計算させる方法
実は、回帰直線
今回はExcelで回帰直線の値を求める方法についてわかりやすくまとめました!
皆さん、Excelの準備はいいですか!?
Step1:データを入力
まずは、データを入力してください。今回は上の例で挙げた電流と電圧から抵抗
なお、電流の値は [mA] など単位がずれていた場合
データの入力が終わったら挿入ボタンをクリックしてください。
Step2:散布図を表示させる
つぎに入力したデータをすべて選択し、上側にある「おすすめグラフ」をクリックします。
すると、グラフの種類が出てきます。
その中から「散布図」を選び、OKをクリックします!
(おそらく一番上に「散布図」が出てきます)
すると、グラフが出てきます。
Step3:y = ax + b の a,b の値を表示させる
つぎに、出てきたグラフの線を右クリックしてください。
すると、色々出てくるので「近似直線の追加」を選んでください。
すると、右側に「近似直線の書式設定」ウィンドウが出てくるので、線形近似であることを確認してから「グラフに数式を表示する」をクリックしてください。
すると、下のように
今回の場合は
しかし、
なので
(表示させる必要がないときはここで終了です。)
Step4:表示桁数を変える
すると、このようなウィンドウが右側に表示されています。
そこからカテゴリを「数値」もしくは「指数」を選んでください。
(指数を選ぶと
※万が一この表示になっていない場合、この画像にある棒グラフのアイコンをクリックすると出てくるはずです。
(1) 数字を選んだ場合
表示させる小数点以下の桁数を入力してください。
桁数を入力してから、適当な箇所をクリックすると自動的に設定が反映されます。
ちゃんと小数第8位まで表示されましたね。
(2) 指数を選んだ場合
指数を選んだ場合、
桁数を入力してから、適当な箇所をクリックすると自動的に設定が反映されます。
ちゃんと
※ Eは10の何乗かを表しています。例えば E-04 であれば
8.さいごに
今回は最小2乗法についてうさぎでもわかるように、仕組みをわかりやすく説明しました。
次回の第3章では、普通のグラフではなく、
- 片対数、両対数グラフによるプロット
- 片対数、両対数グラフを用いた最小2乗法
について説明しています。
*1:有効数字2桁を意識するため、わざと
*2:
*3:シグマと微分演算子は有限の和であればいつでも順番を変えることができます。つまり、
*4:例えばですが、ジュースとかで「内容量 500mL」とか書かれていますね。この 500mLというのは、表向きに(パッケージなどで)言われている値で、実際に 500mL入っているかはわかりませんね。測ったら499mLかもしれませんし501mLくらいあるかもしれません。
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