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こんにちは、ももやまです。
数か月ぶりですが、大学数学の記事を書き進めていきたいと思います。
今回からしばらくの間は、制御数学(信号処理で使う数学)について不定期ですが更新していきたいと思います。
最初となる第01羽は、z変換の基本について説明していきます。
目次 [hide]
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1.z変換の定義・ラプラス変換との関係性
(1) z変換の定義
まずいきなりですが、z変換の定義を見てみましょう。
ある数列
さらに、z変換を行う元の数列
(2) ラプラス変換との関係性
いきなり定義を暗記しろ、って言われても腑に落ちない人もいると思います。
なので、z変換がなぜ(1)で説明した公式の形が出てきたかを(ラプラス変換との関係性を踏まえながら)説明したいと思います。
なお、ラプラス変換についてはこちらで記事にしているため、もしよかったらご覧ください。
まず、ラプラス変換の公式は、
この
つぎに、
(信号処理・制御数学の世界では、「刻む」ことをサンプリング or 標本化と呼びます。)
さらに、刻んだ部分それぞれの面積を
すると、例えば
同様に、
では、
ここで、刻んだ面積
よって総和
ここで、両辺を
すると、
この、
(3) 定義に沿ってz変換を求めてみよう
では、(1)で紹介した定義に沿ってz変換を計算してみましょう!
[解説1]
(1)
まずは、
すると、初項1、公比
よって、
[別解]
マクローリン展開
初項
公式を忘れてしまっても、等比数列の公式
(2)
(1)と同じように
(1)のように無限等比数列の総和の形になんとか持ち込みたいですよね。
しかし、今回の問題はどう頑張っても無限等比数列の形には持ち込めません。
なので別の方法を考えてみましょう。
ここで、
すると、
さらに、両辺に
よって、z変換は
※ しれっと無限級数
無限級数
(4) 片側z変換と両側z変換
先程(1), (2)で取り上げたz変換は、
正と負のうちの片方(正)でのみ定義されてるz変換なので、片側z変換と呼ばれることもります。
一方、
式で書くと、下のような形になります。
※ 本記事では特に指示がない限り、z変換と呼ばれたら片側z変換を指していると思ってください。
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2.逆z変換
z変換を行う前の数列
1対1に対応していることを利用することで、z変換後の関数
先程、
z変換前・変換後の関数は1対1の関係にあるため、
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3.重要なz変換の6つの公式
つぎに、z変換で重要な6つの公式
- 線形の法則(重要度:★★★★★)
- 微分の法則(重要度:★★★★★)
- 指数倍の法則(重要度:★★★★★)
- シフトの法則(重要度:★★★★☆)
- 初期値定理(重要度:★★★☆☆)
- 最終値定理(重要度:★★☆☆☆)
を見ていきましょう。
時間がないという人は、赤色で示された4つの公式を確認すればOKです。
その1 線形(定数)の法則
積分でも、
(1) 足し算(引き算もOK)の分離ができる
(2) 定数倍の分離ができる
※ 2つ合わせて
数列
逆変換でも線形の法則は成り立つ!
なお、逆z変換であっても、
※ラプラス変換と同じです
(1) 足し算(引き算もOK)の分離ができる
(2) 定数倍の分離ができる
※ 2つ合わせて
その2 微分の法則
z変換前の数列
まずは公式を見てみましょう。
微分の法則を使うことで、元の数列
早速導出していきましょう。
まず、z変換の定義式
すると、
よって、
※ 本記事の1章同じく、しれっと無限級数
使用例
実際に使用する場合には、ベースとなるz変換の公式
例えば、
に1回目の微分の公式を適用し、 をつくる に2回目の微分の公式を適用し、 をつくる
の2ステップで導出が可能です。
具体的に微分の法則を用いてz変換を導出する方法は、第02羽のz変換計算編にて説明しますが、非常に重要なため、忘れないうちに1題だけ例題を解いてみましょう。
[解説2]
まずは
つぎに目標の
その3 指数倍の法則
z変換前の数列
微分の公式と同じく、z変換、逆z変換の導出に重要な公式の1つです。
同じく、公式を見てみましょう。
指数倍の法則を使うことで、元の数列
早速導出していきましょう。
z変換の定義式
指数倍の公式は、微分の公式と組み合わせて使うことができます。
例えば、
に対して微分の公式を2回適用することで を作成-
に対して指数倍の公式を適用することで を作成
の2ステップで行うことができます。
指数倍の公式が微分の公式と組み合わせて使えることを体感してもらうために、また1問例題を用意してみたので、解いてみましょう。
[解説3]
あとは
その4 シフトの法則
シフト変換は、数列
基本的な導出ステップとしては、
- z変換の定義式
によりz変換。 のとき、 とおき、 の形に持ち込み、逆z変換を行う。
の2つです。
なお、
その5 初期値定理
初期値定理は、初項
導出もかなり簡単です。
定義式に
なお、「その4 シフト法則」と組み合わせることで、
その6 最終値定理
最終値定理は、数列
(参考書によっては
最終値定理のゆるめな導出(※厳密ではないため注意!!)
※ 厳密に証明する場合、極限の入れ替えが可能なことの証明が必要
途中の式
4.三角関数のz変換
第3章で説明した「微分の法則」、「指数倍の法則」を直接使うだけでは導出できない三角関数
今回は、オイラーの公式
指数関数
今回ほしいのは、
ここで、
となるため、
よって、三角関数のz変換
5.z変換と信号処理
z変換を行うと、数式で表されたディジタル信号
- 時刻
- (ある時刻における)信号の値
の2つで捉えることができます。
まず、z変換の公式は
ここで、
そのため、
言い換えると、見た目は数式で表されていてよくわからないディジタル信号
試しに例題を解いてみましょう。
[解説4]
(1)
(2)
与えられた数列
- 時刻
のときの信号の値:4 - 時刻
のときの信号の値:2 - 時刻
のときの信号の値:-1 - 時刻
のときの信号の値:0
(忘れたり、-1にしないように注意!) - 時刻
のときの信号の値:1 - 時刻
以降の信号の値:0
となることがわかる。あとはこれをグラフにすればOK。
6.さいごに
今回は、制御数学で頻出のz変換を数学的に説明していきました。
次回は、今回説明した公式を使って、実際にz変換や逆z変換を解く練習をしていきましょう!
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