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うさぎでもわかる離散数学 第6羽 関数・写像のいろは - 全域写像/部分写像・全射/単射マスターになろう!

合成写像、逆写像について

本記事の大幅リニューアルに伴い、以前掲載していた「合成写像」「逆写像」「連続関数の写像」についての解説は一旦削除いたしました。

これらの項目については、今後のリニューアルアップデートにて別記事などで改めて分かりやすく解説する予定ですので、どうぞお楽しみに!

お知らせ

この記事では、日本のバレンタインをベースにした、「女性から男性へプレゼントを贈る」 設定が出てきます。

現実の愛の形は自由ですが、数学のルールを学ぶため、分かりやすさを優先した例えとしてお許しください。

こんにちは、ももやまです!

「写像」「全域写像」「全射」「単射」……離散数学を学んでいると、突然こんな呪文みたいな専門用語がたくさん出てきますよね。
教科書やネットの解説を開いても、謎の記号や小難しい定義ばかりがずらりと並んでいて、「もういやだ!」とブラウザを閉じたくなった経験はありませんか?

でも、安心してください!
今回の「第6羽」では、そんなややこしい数式や専門用語は一旦脇に置いておきます。
身近な例えを使いながら、うさぎでもスッキリ理解できるくらい「簡単な言葉」で解説していきます。

この記事を読み終える頃には、あなたが「写像マスター」として全域・部分写像や、全射・単射の違いを完璧に見分けられるようになっているはずです。一緒に楽しく学んでいきましょう!

1. 動画での解説はこちら!

本記事の内容は、動画でも解説しております。動画でご覧いただきたい方は、以下の動画をご覧ください。

2.写像を学ぶ前の準備:「関数」のおさらい

「写像(しゃぞう)」について本格的に学ぶ前に、まずは高校までの数学で習った「関数」について振り返ります。

(1) 関数とは「魔法の箱」

関数とは、分かりやすく言うと「値 $x$ を入れると、結果 $f(x)$ が出る魔法の箱」のことです。

中学校や高校の数学で、$y = 2x$ や $f(x) = 2x$ といった式を学んだと思います。これがまさに「魔法の箱」の正体です。

例えば、$f(x) = 2x$ というルールの箱に、入力として「3」という数字を入れてみます。

/

このように、「3」を入れると箱の中のルールに従って計算され、「6」になって出てきます。これが関数の基本的な働きです。

(2) 関数における重要なお約束

関数と呼ぶためには、とても重要な「お約束」が1つあります。

それは、「1つの $x$ から出てくる $f(x)$ の値は、ただ1つだけ」でなければならない、ということです。

例えば、「3」を入れたのに、ある時は「6」が出て、別の時には「8」が出たりするような気まぐれな箱は、「関数」とは呼べません。

入力に対して、常に決まった1つの結果だけを返してくれる。この厳密さがあって初めて、その箱は「関数」として認められます。

(3) 関数から「写像」へ

関数の「ルールに従って決まった結果を返す魔法の箱」というイメージは、写像を理解する上でとても重要になります。

これから学んでいく「写像(Mapping)」は、ズバリこの魔法の箱(関数)の「パワーアップバージョン」です。

今までの数学で関数に入れていたのは「数字」だけでした。

しかし、写像の世界では、この箱に「数字以外のもの」も入れることができるようになります。

このように、数字以外のものまで扱えるように関数のルールを拡張した魔法の箱こそが、「写像」の正体です。関数の基本イメージを踏まえた上で、ここから「写像」の性質について詳しく見ていきます。

3.写像とは

(1) 簡単に言うと

関数は数字しか扱えませんでしたが、写像は「数字以外」のものも入れたり出したりできるんです。

つまり、「$x$ を入れると、結果 $f(x)$ が出る魔法の箱」です。

例えば、身近な「自動販売機」を想像してみてください。

自動販売機では、入力する $x$ が「ボタン」で、出力される $f(x)$ が「飲み物」になります。

対象が数字からモノに変わっただけで、「ボタンの集まり」から「飲み物の集まり」へ対応関係を作る根本的な仕組みは、関数と全く同じですよね。これが写像の基本的なイメージです。

写像と関数

大学の先生によっては、写像のこともまとめて「関数」と呼ぶ人もいます。

(2) 写像にも引き継がれる、お約束

そして、ここで関数で学んだ「あの超重要ルール」がそのまま適用されます。

それは、「1つの入力から出てくる結果は、絶対にただ1つだけ」というルールです。

もし自販機でボタン1を押したのに、水とコーラが2つ同時に出てきたらどうでしょうか。

それは「自販機が壊れている!」ということになりますよね。

つまり、これは写像のルール違反になってしまうのです。

対象が数字から様々なモノへと広がっても、「1つの入力から出るのはただ1つだけ」。これが写像の変わらない正体です。

(3) 写像の数学的定義

自動販売機のイメージが掴めたところで、実際に「ボタンと飲み物の対応関係」を数学の記号で表してみましょう。

写像を扱うとき、一番よく見かけるのが $f: A \to B$ という記号です。これは「集合 $A$ から集合 $B$ への、写像 $f$」ということを表しています。

「$A$ から $B$ へ」という方向が、そのまま矢印になっているんですね。

このように、大学の数学では、「どんなモノの集まり(集合)から、どんなモノの集まり(集合)へ対応させるのか」という「グループ全体」が主役になります[1]高校までの数学だと、「$f(x) = 2x$」のように、数字を入れて数字を出す「計算のルール(式)」ばかりに注目していましたね。

つまり写像という魔法の箱の正体は、集合 $A$ という世界にあるすべてのものに、集合 $B$ という世界の行き先を、たった1つずつ指し示す「完璧な地図」のようなルールのことなんです。

だからこそ、さっきの自販機のように「ボタンの集合」から「飲み物の集合」へ、という書き方ができるのです。式そのものよりも「どこから、どこへ行くのか」という宣言がとても重要になります。

(4) 写像の数学的定義

では具体的に、この「ボタンの集合 $A$」から「飲み物の集合 $B$」への対応関係を、3つの書き方で紹介します。表している中身は全部同じですが、場面によって使い分けます。

① おなじみの書き方

いつもの関数と同じように、$f(\text{ボタン1}) = \text{水}$ と書きます。見慣れた形なので安心しますね。

② プロっぽい書き方

根っこに縦線が入った特殊な矢印 ($\mapsto$) を使って、要素同士が対応していることを表します。\[
\text{ボタン1} \mapsto \text{水}
\]この矢印を使うと、なんだか数学のプロっぽくてかっこいいですね。

③ ペアの集合としての書き方

離散数学で一番よく使うのが、この書き方です。

入力と出力のペアを $(\text{ボタン1}, \text{水})$ のようにカッコでくくって、それを全部集めて集合の形にします。\[
f = \{(\text{ボタン1}, \text{水}), (\text{ボタン2}, \text{コーラ}), (\text{ボタン3}, \text{カルピス})\}
\]対応する組み合わせを、座標のように全部リストアップしてしまうのです。

実は、写像の正体というのは、この「入力と出力のペアを詰め合わせた集合」のことでもあります。

この3番目の書き方は今後もたくさん出てくるので、しっかり目に焼き付けておいてくださいね!

ここまでのおさらい

■ 関数(魔法の箱)のおさらい

  • 関数とは「値 $x$ を入れると、結果 $f(x)$ が出る魔法の箱」。
  • 絶対ルール: 1つの入力に対して、出てくる結果は「ただ1つだけ」!

■ 写像とは?

  • 関数のパワーアップ版!数字以外のモノも扱える。
  • (例:自販機の「ボタン」を入力すると、「飲み物」が出る)
  • 写像でも、関数のルール「1つの入力から出る結果はただ1つ」はそのまま!

■ 写像の数学的な書き方

  • 「集合 $A$ から集合 $B$ への写像」を、$f: A \to B$ と書く。
    (どのグループから、どのグループへ対応するかが主役!)
  • 対応関係の表し方3選:
    1. おなじみの書き方: $f(\text{ボタン1}) = \text{水}$
    2. プロっぽい書き方: $\text{ボタン1} \mapsto \text{水}$
    3. ペアの集合: \[
      f = \{(\text{ボタン1}, \text{水}), (\text{ボタン2}, \text{コーラ}), \dots \}
      \]

※ 「ペアを詰め合わせた集合 \( f \) 」でも、写像を表せるという考え方は重要!

4.全域写像(関数)と部分写像(関数) [写像の入力に着目!]

ここからは「入力」に注目して、写像を

  • 全域写像(ぜんいきしゃぞう)
  • 部分写像(ぶぶんしゃぞう)

の2つのグループに分けてみましょう。

(1) 全域写像(関数) [売り切れなし]

全域写像とは、「すべての入力に対して、必ず結果が定義されている」状態のことです。

「どのボタンを押しても必ず飲み物が出てくる、売り切れが一切ない超優秀な自販機」がイメージです。

入力側の集合(ボタンの集合)にあるすべての要素から、必ず結果の矢印が出ています。

全域写像(関数) のことを、写像(関数) と呼ぶ人もいます

単に「関数」や「写像」と出てきたときは、この「全域写像」を指すことが一般的なので覚えておいてくださいね。

(2) 部分写像(関数) [売り切れあり]

一方、部分写像とは、「結果が出ない入力があってもOK」な状態のことです。

「一部の飲み物が売り切れになっていて、飲み物が出てこない…。」というのが、イメージです。

入力側全員が結果を出さなくても、一部だけ結果を出していればいいので「部分」という名前がついています。

(3) 例題にチャレンジ!

ここからは、実際に例題を解いてみましょう。

例題1

つぎの関係 \( f_1 \), \( f_2 \), \( f_3 \) がある。

\( f_1 : A \to B \), \( A = \{1, 2 \} \), \( B = \{ a, b \} \) \[
f_1 = \{(1, a), (1, b)\}
\]

\( f_2 : A \to B \), \( A = \{1, 2 \} \), \( B = \{ a, b \} \) \[
f_2 = \{(1, a), (2, a)\}
\]

\( f_3 : A \to B \), \( A = \{1, 2 \} \), \( B = \{ a, b \} \) \[
f_3 = \{(1, a)\}
\]

これらの関係が写像かどうか判定しなさい。また、写像であるのであれば、それは全域写像か部分写像のどちらか。1~3の選択肢で答えなさい。

  1. 全域写像(関数)である
  2. 部分写像(関数)である
  3. 写像(関数)ではない

※ 慣れるまでは、実際に対応関係を図示して判定することをおすすめします。

(1) \( f_1 = \{(1, a), (1, b)\} \)

この式を図にすると、入力の 1 から、a と b の2か所に矢印が出ることになります。

これは、自販機で「ボタンを1つ押したら、飲み物が2本同時に出てきてしまった(壊れている)」状態です。

写像の超重要ルールである「1つの入力から出る矢印は絶対に1本だけ」という約束を破っているので、これはそもそも「写像(関数)ではない」となります。

よって、3. 写像(関数)ではない が答えです。

(2) \( f_2 = \{(1, a), (2, a)\} \)

この式を図にすると、1 から a へ、そして 2 からも a へ矢印が出ます。

行き先が同じ a でかぶっていますが、入力側の 1 と 2 は「全員が必ず1本だけ矢印を出す」というルールをしっかり守っています。

したがって、これは写像として全く問題なく、「全域写像」となります。

答えは、1. 全域写像(関数)である です。

(3) \( f_3 = \{(1, a)\} \)

この式を図にすると、1 は a へ行きますが、2 の対応は何も書かれていないため、2 からはどこにも矢印が出ません。

これは「2 はお休み(売り切れ)」していて結果が出ない状態です。結果が出ない入力が含まれているので、これは「部分写像」になります。1

答えは、2. 部分写像(関数)である です。

このように、式から「入力側の矢印の出方」を書くだけで、全域写像/部分写像の判定は簡単にできるのです!

5.全射と単射 [写像の出口 に着目!]

ここからは

  • 全射(ぜんしゃ)
  • 単射(たんしゃ)

という、めちゃくちゃ重要な2つのルールを紹介します。

名前からして難しそうに感じるかもしれませんが、ここではうさぎ界の「バレンタインのプレゼント」に例えて考えてみましょう。

「送り手の女の子うさぎ(集合A)」から「受け手の男の子うさぎ(集合B)」へ、「ニンジン」をプレゼントする写像として考えると、ルールの違いが一瞬で分かりますよ!

(1) 全射とは? [誰も「ぼっち」にならない]

全射を一言でいうと、「受け手の男の子が、全員ニンジンをもらえている状態」のことです。

ポイントは「出力(受け手)全員がカバーされているか」です。

[i] 全射といえる例

  • はやと君、れおん君の全員がニンジンをもらっている。
  • れおん君は2本もらっているが、「全員が最低1本もらう」というルールを満たすのでOK。

[ii] 全射といえない例

  • れおん君がニンジンをもらえていない(ぼっちがいる)。

(2) 単射とは? [「かぶり」は許さない]

単射は、「1匹の受け手(男の子)が、複数の送り手(女の子)からニンジンをもらってはいけない」という少し厳しいルールです。

ポイントは「出力(受け手)に『かぶり』が一切ないか(最大でも1つまでか)」です。

[i] 単射といえる例

  • ひびき君、ゆうた君はそれぞれ1本ずつしかニンジンをもらっていない。
  • りくお君は0本だが、「もらうなら最大1本まで」のルールなのでOK。

[ii] 単射といえない例

  • ひびき君が2人からニンジンをもらってしまっている(かぶりがある)。

(3) 全射と単射の数学的な定義(プロの書き方)

ここまでイラストで見てきたルールを、大学数学の「プロの書き方」で表すとどうなるか見てみましょう。

全射と単射の定義

\( f: A \to B \) とする。

以下を満たすとき、全射と呼ぶ。\[
\forall y \in B, \exists x \in A, f(x) = y
\]

以下を満たすとき、単射と呼ぶ。\[
\forall x_1, x_2 \in A, f(x_1) = f(x_2) \to x_1 = x_2
\]

難しそうなアルファベットの記号が出てきましたね。

数式の意味を読む前に、まずは \( \forall \), \( \exists \) の意味をおさらいしましょう。

\( \forall \), \( \exists \) のおさらい

\( \forall \): 英語の「All(すべて)」の頭文字Aを逆さにしたもので、「すべての〜」という意味です。

\( \exists \): 「Exists(存在する)」の頭文字Eを逆さにしたもので、「〜が存在する」という意味になります。

詳細な解説については、以下の記事をご覧ください。

では、この2つの記号の意味を踏まえて、定義の式を読んでみましょう。

[i] 全射の定義

定義式は、\[
\textcolor{deepskyblue}{\forall y \in B}, \textcolor{magenta}{\exists x \in A}, f(x) = y
\]でしたね。

これをバレンタインのシチュエーションにすると、「受け手の男の子うさぎ \(y\) を全員 \(\forall \) 見渡したとき、必ずニンジンをくれた送り手の女の子うさぎ \(x \) が(1匹以上)存在 \(\exists \) する」と解釈できます。

つまり、さっきの「どの受け手を選んでも、必ずプレゼントをくれた人がいる(受け手側で誰も『ぼっち』じゃない)」という状態を、数学の言葉で厳密に表したものなのです。

[ii] 単射の定義

定義式は、\[
\textcolor{magenta}{\forall x_1, x_2 \in A} , \textcolor{deepskyblue}{f(x_1) = f(x_2)} \to \textcolor{magenta}{x_1 = x_2}
\]でしたね。

これをバレンタインのシチュエーションにすると、「もし、届いたニンジンが同じ男の子のものだった \(f(x_1) = f(x_2) \) としたら、それは絶対に、同じ女の子が贈ったものだ \(x_1 = x_2 \)」と解釈できます。

言い換えると、「別々の女の子から、同じ男の子に届くことはない(かぶりは絶対にない!)」ということになります。

[iii] 全単射の定義

全単射とは、文字通り「全射と単射の両方を満たしている状態」のことを指します。

つまり、受け手に「ぼっち」がいなくて、しかも「かぶり」もない完璧な状態ですね。

数学の定義は、誤解がないように厳密に書かれているだけで、言っていることはイラストで学んだシンプルなルールと全く同じなのです。

(4) 例題にチャレンジ

ここからは、実際に例題を解いてみましょう。

例題2

つぎの写像 \( f_1 \), \( f_2 \), \( f_3 \), \( f_4 \) がある。

\( f_1 : A \to B \), \( A = \{1, 2, 3\} \), \( B = \{ a, b \} \) \[
f_1 = \{(1, a), (2, b), (3, b)\}
\]

\( f_2 : A \to B \), \( A = \{1, 2\} \), \( B = \{ a, b, c \} \) \[
f_2 = \{(1, c), (2, b)\}
\]

\( f_3 : A \to B \), \( A = \{1, 2, 3\} \), \( B = \{ a, b, c \} \) \[
f_3 = \{(1, c), (2, a), (3, b)\}
\]

\( f_4 : A \to B \), \( A = \{1, 2, 3\} \), \( B = \{ a, b, c \} \) \[
f_4 = \{(1, b), (2, b), (3, c)\}
\]

これらの写像が全射、単射、全単射のどれに当てはまるか。以下の1~4の選択肢から答えなさい。

  1. 全単射である
  2. 全射である(単射ではない)
  3. 単射である(全射ではない)
  4. 全射でも単射でもない

(1) \( f_1 \)

全射の判定)

出力(受け手)側の集合 \( \{a, b\} \) に注目してください。a も b も矢印(ニンジン)をもらっているので、「ぼっち」はいません。したがって、これは「全射」です。

単射の判定)

一方で、b が 2 と 3 の2か所から矢印をもらっており、「かぶり」が発生しています。かぶりがあるため、「単射」ではありません。( \( 2, 3 \mapsto b \) のため、単射ではない)

答えは、2. 全射である(単射ではない)です。

(2) \( f_2 \)

全射の判定)

出力側の集合 \( \{a, b, c\} \) を見ると、a が誰からも矢印をもらえていません。「ぼっち」がいる状態なので、これは「全射」ではありません。

単射の判定)

一方で、矢印をもらっている b と c はそれぞれ1本ずつなので、「かぶり」はありません。したがって、これは「単射」です。

答えは、3. 単射である(全射ではない)です。

(3) \( f_3 \)

出力側の a, b, c 全員が、ちょうど1本ずつ矢印をもらっています。

「ぼっち」がいなくて、しかも「かぶり」もありません。

答えは、1. 全単射である です。

\( f_4 \)

全射の判定)

出力側の a が誰からも矢印をもらっていない「ぼっち」なので、全射ではありません。

単射の判定)

b が 1 と 2 の2か所から矢印をもらっており、「かぶり」が発生しています。かぶりがあるため、「単射」ではありません。( \( 1, 2 \mapsto b \) のため、単射ではない)

答えは、4. 全射でも単射でもない です。

6.練習問題にチャレンジ! 数え上げ

それでは、ここまで学んだ知識を使って、条件を満たす写像が「何通り」あるかを数え上げる問題に挑戦しましょう。全部で5問あります。

引き続き、集合 \( A = \{1, 2\} \) を送り手の女の子、集合 \( B = \{a, b, c\} \) を受け手の男の子、矢印をプレゼントのニンジンとして考えるとイメージしやすいです。

練習問題

集合 \( A = \{1, 2\} \)、\( B = \{a, b, c\} \) とする。

このとき、(1)~(5)の条件を満たす写像はそれぞれ何通りあるか求めなさい。

(1) A から B への全域写像で相異なるもの

(2) A から B への部分写像で相異なるもの

(3) A から B への単射(全域写像)で相異なるもの

(4) B から B への全単射 (1対1対応)

(5) B から A への全射(全域写像)

7.練習問題の答え

1番の女の子と2番の女の子が、a, b, c くんの誰にニンジンを渡すかを考えます。

(1) 全域写像の数え上げ

全域写像なので、すべての入力から必ず矢印が出ます(自動販売機だと、売り切れなしの状態)。

  • 1の行先:a, b, c の誰に渡してもよいので、3通り。
  • 2の行先:同じく3人の誰に渡してもよいので、3通り。

これらを掛け合わせて、\( 3 \times 3 = 9 \) 通り になります。

よって、答えは 9通り です。

(2) 部分写像の数え上げ

全域写像との違いは「結果が出ない入力があってもOK(誰にも渡さない子がいてもいい)」という点でした。
※ 自動販売機で言う、売り切れのボタンがあってもOKな状態。

したがって、行き先の選択肢に「誰にも渡さない」という1通りが追加されます。

  • 1の行先:a, b, c、そして「渡さない」 4通り。
  • 2の行先:同じく a, b, c, 渡さない の 4通り。

これらを掛け合わせて、\( 4 \times 4 = 16 \) 通り になります。

よって、答えは 16通り です。

(3) 単射の数え上げ

単射のルールは「出力側(受け手の男の子)にかぶりがない状態」です。

  • 1の行先:a, b, c のうち誰かに渡すので、3通り。
  • 2の行先:1が選んだ男の子にはかぶって渡せないので、残りの2人から選ぶことになり、2通り。

これらを掛け合わせて、\( 3 \times 2 = 6 \) 通り になります。

よって、答えは 6通り です。

(4) 全単射(1対1対応)の数え上げ

この問題は「B から B へ」となっていることに注意してください。

a, b, c くんの3人が、自分たち3人の中でプレゼントを渡し合う状況です。全単射なので、「ぼっち」も「かぶり」もありません。

  • a の行先:3人のうち誰かを選ぶので 3通り。
  • b の行先:かぶり禁止なので、残り 2通り。
  • c の行先:さらに残った最後の 1通り。

これらを掛け合わせて、\( 3 \times 2 \times 1 = 6 \) 通り になります。

よって、答えは 6通り です。

(5) 全射の数え上げ

最後は「B から A へ」の全射です。男の子たちから女の子たちへの「お返し」と考えましょう。ホワイトデーですね。

全射のルールは「出力側(女の子)にお返しをもらえない『ぼっち』がいない状態」です。この計算は、2つのステップに分けて考えます。

Step1. 全パターン(全域写像の数)を求める

まずは条件を気にせず、すべてのパターンを出します。(1)でやったのと同じ考え方です。

  • a の行先:1か2の2通り。
  • b の行先:1か2の2通り。
  • c の行先:1か2の2通り。

これらを掛け合わせて、\( 2 \times 2 \times 2 = 8 \) 通りです。

Step2. 全射の条件を満たさないものをStep1から引く

全射にならない(女の子にぼっちがいる)ケースは、以下の2パターンだけです。

  • 3人全員が1に渡してしまう(2がぼっちになる):1通り
  • 3人全員が2に渡してしまう(1がぼっちになる):1通り

したがって、全パターンの8通りから、この「すべて1」と「すべて2」になってしまうケース(合計2通り)を引き算します。

よって、8 - 2 = 6 通り が答えです。

8.【おまけ】写像の数を一般化してみよう(公式集)

ここまでの考え方を踏まえて、要素の数が $m$ 個の集合 $A$ と、$n$ 個の集合 $B$ に一般化した「公式」としてまとめると、次のようになります!

(1) 全域写像の数え上げ

集合 \(A \), \( B \) を次のように設定します。\[
A = \{1, 2, 3, \dots, m\} , \ \ \ B = \{1, 2, 3, \dots, n\}
\]つまり、集合 \( A \) の要素数は \( m \) 個、集合 \( B \) の要素数は \( n \) 個ですね。

$m$ 人の送り手(集合A)が、それぞれ $n$ 人の受け手(集合B)の誰に渡すかを選びます。

全員が $n$ 通りの選択肢を持つので、$n \times n \times \dots$ と $n$ を $m$ 回掛け合わせます(重複順列)。

よって、\( n^m \) 通り が答えとなります。

(2) 部分写像の数え上げ

集合 \(A \), \( B \) は次の通りです。\[
A = \{1, 2, 3, \dots, m\} , \ \ \ B = \{1, 2, 3, \dots, n\}
\]集合 \( A \) の要素数: \( m \) 個、集合 \( B \) の要素数: \( n \) 個。

全域写像の選択肢に「誰にも渡さない($\times$)」という1つの選択肢が追加されます。

つまり、全員が $(n+1)$ 通りの選択肢を持つので、$(n+1)$ を $m$ 回掛け合わせます。

よって、\( (n+1)^m \) 通り が答えとなります。

(3) 単射の数え上げ

集合 \(A \), \( B \) は次の通りです。\[
A = \{1, 2, 3, \dots, m\} , \ \ \ B = \{1, 2, 3, \dots, n\}
\]集合 \( A \) の要素数: \( m \) 個、集合 \( B \) の要素数: \( n \) 個。

単射が成り立つ条件に注意!

単射のルールは「かぶり禁止」です。
かぶりをなくすためには、プレゼントの送り手(\( m \) 人)よりも、 受け手(\( n \) 人)の数が「同じか、それ以上」である必要があります。

もし受け手の方が少ないと、どうしても誰か1人に2つのプレゼントが届いてしまい、単射は絶対に作れません(0通りになります)。

  • 1人目は、$n$ 通り
  • 2人目は、1人目が選んだものを除いた残り $(n-1)$ 通り
  • 3人目は、2人目までが選んだものを除いた残り $(n-2)$ 通り……

と選択肢が1つずつ減っていきます。

これらをすべて掛け合わせたものが答えです。高校数学で習う順列(P:パーミュテーション)の計算そのものです。

よって、\[
n(n-1)(n-2) \cdots (n-m+1) = {}_n \mathrm{P} _m \ \mathrm{通り}
\]が答えとなります。

(4) 全単射の数え上げ

集合 \(A \), \( B \) は次の通りです。\[
A = \{1, 2, 3, \dots, m\} , \ \ \ B = \{1, 2, 3, \dots, n\}
\]集合 \( A \) の要素数: \( m \) 個、集合 \( B \) の要素数: \( n \) 個。

全単射が成り立つ条件に注意!

全単射のルールは「かぶりなし」かつ「ぼっちなし」です。

全員が1対1で綺麗にペアになるためには、送り手と受け手の人数が完全にピッタリ同じでなければなりません。

少しでも数が違うと、余る人や足りない人が出てしまうため、全単射は絶対に作れません(0通りになります)。

要素数 $n$ 個の集合から、同じく $n$ 個の集合への「かぶりなし・ぼっちなし」の対応です。

  • 1人目は、$n$ 通り
  • 2人目は、1人目が選んだものを除いた残り $(n-1)$ 通り
  • 3人目は、2人目までが選んだものを除いた残り $(n-2)$ 通り
  • 4人目 ~ n-1 人目も同じように続いていき
  • n人目は、n-1 人目までが選んだものを除いた残り 1 通り

の各通りを、すべて掛け合わせた\[
n \times (n-1) \dots \times 1 = n!
\]となります。

(5) 全射の公式は存在しない

全射だけは、簡単に一般化された公式はありません。

正確に言うとあるのですが、あえてここでは「全射の公式」は紹介しません。

理由としては、「公式が複雑すぎて丸暗記するメリットが全くないから」です。

全射を一般化した公式を作ろうとすると、「包除原理(ほうじょげんり)」という考え方を用いた、足し引きが連続するとても長くて複雑な数式になるからです。

実際のテストで出題される場合、出力側の集合の要素の数はせいぜい練習問題のような「2〜3個」程度です。

そのため、無駄に長い公式を暗記して計算ミスをするよりも、

  • Step1. 全パターンを出す
  • Step2. ダメなパターン(ぼっちがいるケース)を引き算する

という『考え方のプロセス』**を理解しておく方が、よっぽど早く正確に答えにたどり着けるのです。

(6) 公式まとめ

最後に、数え上げの公式をまとめたものを紹介します。

写像数え上げ公式集

集合 \( A \)、\( B \) を以下のように定義する。\[
A = \{1, 2, 3, \dots, m\} , \ \ \ B = \{1, 2, 3, \dots, n\}
\] \( A \) の要素数: \( m \)、\( B \) の要素数: \( n \)

写像の種類条件パターンの総数 (通り)覚え方のヒント
全域写像なし\( n^m \)\( m \) 人全員が、\( n \) 個の選択肢を持つ。
部分写像なし\( (n+1)^m \)\( m \) 人全員が、\( n \) 個 + 「渡さない」という選択肢を持つ。
単射\( m \leqq n \)\( {}_n \mathrm{P} _m \)選択肢が \( n \), \( n-1 \), … と1ずつ減っていく。これらを掛け合わせる。
全単射\( m = n \)\( n! \)選択肢が \( n \), \( n-1 \), … と1ずつ減っていき、最終的に1となる。これらを掛け合わせる。
全射\( m \geqq n \)暗記不要(全パターン) - (全射にならない[ぼっちあり]) で計算する。

9.確認テスト

最後に、今回の記事で勉強した内容が、理解できているかどうかをどうかを確認するための小テストを作りました!

理解度確認に是非チャレンジしてみてください!

※ 回答フォームに入力後、自動採点 & 自動解説表示が行われます。

注釈

注釈
1 高校までの数学だと、「$f(x) = 2x$」のように、数字を入れて数字を出す「計算のルール(式)」ばかりに注目していましたね。
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